DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>
「え? あ、うん。ちょっとここじゃ見かけない感じの人だったから……なんだか身なりも良かったし」
そう、違和感のひとつには身なりのこともある。至近距離ですれ違った客人が着ていたコートは随分滑らかそうな生地をしていて、あまり見掛けないものだった。
色合いが地味だったから遠めには目立たないだろうが、近くで見れば明らかに仕立が良いのが分かる。
「ああ……そうじゃなあ。確かに父親は今は軍の高官殿じゃからなあ」
「へ~え……どうりで……って、お爺ちゃんにそんな偉い知り合い居たの?」
納得して頷きつつ、途中でリリスは目を丸くして祖父の顔を見上げた。
「なんじゃその顔は? おっても不思議はないじゃろうて? こう見えてもワシは結構顔は広いんじゃ高官の知り合いの一人や二人」
「ええー? だってそんな人訪ねてきたこと今までないじゃない。いつもはどっちかっていうと柄の悪そうな……」
「失礼なやつじゃのう」
歯に衣着せぬリリスの物言いにガーフィールドは軽く肩をすくめて溜息を吐くと
「それより忘れ物取りにきたんじゃろ? 行かなくていいのかね?」
そう言ってリリスの手に下げられた袋を指差した。
「あ! そうだった!!」
言われてハッと自分の用事を思い出しリリスは声を上げる。そうだったこれをアナベルのところへ届けなくてはいけないのだ。
「行って来るっ」
今度こそちゃんと二つ袋を持っているのを再度確認して、リリスは店を飛び出した。
少々手荒に閉められたドアの上に取り付けられた呼び鈴が、大きく揺れて騒がしい音を立てる。
「せっかちなやつじゃのう……」
窓越しに、駆けていく孫娘の姿を見送りながらガーフィールドはやれやれと苦笑して、そして窓に目を向けた弾みに、窓際に並べられた白い花鉢が視界に入って目を細めた。
「ああ、そうじゃ。お前さんにも水をやらんとな」