DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>
その絶対を翻すというならば、最愛のものは手放さなければならない。
それが守るための手段。
そう、何があっても巻き込んではならない……ならないのだ。
「おっと……」
考えているうちに、とっくにその許容量を超えて、水差しから水が溢れているのに気がつき、慌てて蛇口を捻る。
運ぶ際に零さないように、少しだけ水量を減らして、廊下を戻り店の方へ続くドアをくぐる。
まだ電気をつけずとも明るい店内。
薄暗い廊下から出てきたため、その眩しさに僅かに目を細めながら窓辺へ向かう。
道路側に少し出っ張ったスペースに幾つも並ぶ花鉢。
もともとは花など置いてなかった。
だが、縁あって置かれることになった小さな花鉢は、二年ほどの間にその花株を増やし、埃まみれの本しかない狭苦しい印象しかなかった店内も随分華やかになったものだ。
水を注いでやると、ガラス越しの光にきらめく水滴を弾ませて、白い花弁がふるふると微かに揺れる。