DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>



戦地で次々と功績をあげるウリエルやラファエル、ミカエルの話は当然ガブリエルの耳にも届いていた。それに対し、一番最初に作られた守護天使であるはずなのに戦地へ出されることのない自身を、ガブリエルは少々なりとも気にしていた。

勿論戦地に出ない理由は分かっている。

元々守護天使として作られたメイデンの一体目であるガブリエルに与えられた力は、守りや癒しの属性である水の力。

作られてすぐには戦地へ行ったこともある。もちろん戦闘用のスキルも持ってはいるが、作られた目的どおり部隊後方から攻撃支援や回復を人知れず行う、そんな役割を任ぜられていた。

そしてそうやって試験的に戦闘に参加したガブリエルから得たデータや分析を元に、ガブリエルにとっては一人目の妹。全く逆の属性を持つ攻撃型のメイデンであるウリエルが作られてからというもの、ガブリエルが戦地へ出されることはなくなった。

軍が出した結論は、戦地に必要なのは防御力ではなく圧倒的な攻撃力。回復型ではなく破壊型の守護天使という、侵略を繰り返してのしあがってきた軍事大国エルカイザらしい、実に理にかなったものだった。

首都アルマ、王宮の守護者としての役目を与えられたものの、ウリエルに続きラファエル、ミカエルを要する今、ここまで攻め込まれることなど皆無に等しい。

更なる開発の為の研究への協力としてこうして時々研究所へ足を運ぶ以外は王室で控えているしかないことに大して、引け目のようなものを近頃は感じている。

妹達は当然愛しい。守護天使になる前の記憶はガブリエルには一切残っていない。身よりも過去も持たないガブリエルにとっては唯一の繋がりのある者達。そして、そんな自分にこうして生を与え、変わらぬ慈しみを持って接してくれる王妃も然り。

ガブリエルにとってはそれだけが唯一の自分の世界。

だから、母である王妃や妹である他のメイデン達に対して不満や嫉む気持ちがあるわけではない。寧ろ……彼女達を愛しく思うからこそ、彼女達の力になれていないのではないかという自身の現状にガブリエルは憂いを感じるのだ。



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