DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>
屈託なく素直に頷き、軍用コートを羽織り身支度を整えたガブリエルを、コーエンは実験室のドアまで見送り、そして彼女の背が廊下の角を曲がるのを確認して再びドアを閉めた。
――最も。先の妹達とは少し違うがね。
そう、口の中で呟き。その名の通り天使のような笑顔を見せたガブリエルの顔を再度思い浮かべる。
邪気のない純真なその性格は、人によっては愛おしさを感じずにいられないだろうが、コーエンにとってはただ扱いやすいと思うものでしかなく、人そのままの本質を残した守護天使の姿は、戦闘人形としては歪にも映る。
ガブリエルのみに限らず、他の守護天使についても同じく。
最も歪とはいえ、その出来上がり具合にコーエン自身は不満はない。彼女らの存在も異端だが、コーエン自身も科学者としては異端なる思想をもってこのプロジェクトに参加したのだから。そして、彼女達はまさにその思想の実現に限りなく近い答えを出してくれている。
ただ、いまだに不思議なのが。このプロジェクトを立ち上げた王妃の思惑だ。
普通に科学者として考えて、自身ですら歪んでいると考えるその方針を自ら発案し推し進め、誰よりもこだわってきた王妃はコーエンから見ても不思議に思えたものだ。
結果的にそれは機動性の向上や魔導能力を付与する上で効果的、又は必要不可欠な部分もある方針であると、今まで作ったメイデン達が実証してくれたわけだが、あくまでそれは後付けに過ぎず、プロジェクト提唱当時に確たる理論があったわけではない。