D U S H ! !
静かになったそこで、俺はユカに電話をかけた。
ルルルル、と続く電子音。
すると彼女の声がした。
「ヤマトくんっ!」
携帯片手にライブハウスの玄関から出てきたユカ。
手前で会ったカイジ達には、『オレ達まだまだ帰れそうにないからヤマトが一人で送ってやるって』と言われたらしい。
カイジには完璧にバレている、そう思った。
ありがたやと一礼をしたら、ユカに怪しい目で見られたけれど、『ふふふ』と笑っておいた。
「確かにこれは一人じゃ怖いな」
辺りはしんとしてるのに、どこからか賑やかな声がしている。
狭い路地も、怖い。
「ヤマトくんがビビってるじゃんー。頼りにならないなあ」
「一応俺は空手やってたんだぞ。茶帯まで」
「茶帯って凄いの?」
「黒の一つ前」
「結構スゴかったー」
それから、学校での話、ライブの話、電車に乗ってからはユカのバンドの話なんか。
これまでこんなに話したことはなかった。
彼女のことをこんなに知らなかったなんて。
「ヤマトくんってこの駅だっけ?」
電車にゆられて30分。
俺が降りる駅になった。
ユカが降りるのはまだ一駅先らしい。
さすがに、ここまでやってきたのに家まで送らなきゃ駄目だよな、そう思った俺は、咄嗟に寝たフリをする。
これしか考えつかなかったんだ、彼女を最後まで送る方法。
「夜中は危ないから送ってくよ」
そんなことは言えないから、
腕組みをして、頭を下げた。