エリートな貴方との軌跡
ガヤガヤと騒がしい中を一足先に退社する私は、セキュリティを潜り抜けると。
ガチャリと音を立てて開いたドアの向こうで、ある人の姿を捉えたのだけれど…。
「真帆ちゃんー、遅い…!」
「す、すみませんー、松岡さんにちょっと…」
それはもちろん、先ほど試作部へと誘導してくれた不機嫌な絵美さんで。
待たせた事にお詫びをしながらも、即座に歩き始めた彼女について行く私。
「まったくもう…、あんなヤツはシカトで良いのよ。
イイ?本社のウザ男と胡散臭いスマイルキラーなんて、相手にしないのが一番。
あー、考えただけでウザッ…!」
「アハハ・・・」
飛び火するようにして持ち上げられた、本社と支社の予測不能なエリート2人。
語尾のフレーズはヤケに力を込めていて、その眼光の鋭さは流石だと思う。
「あー、ペテン師と寝床を共にするなんて絶対ヤだし。
今日くらい、実家に帰って来ようかしら…」
帰宅しようとしている私だけれど、この状況を放っておける訳などなくて。
そのままエレベーターに乗り込む彼女に同行して、無用に上を目指している現在。
「え、絵美さーん…、寂しがるからダメですよ、ね?」
大切なパートナーから胡散臭い呼ばわりされている、スマイルキラー曰く。
寝食以外の動き回る姿が“回遊魚”という彼女の、難しい表情から伺えた事は。
怨念篭った発言の数々で、きっと松岡さんが宜しくない発言をしたに違いない。
そもそも原因を作り出したのは私だから、余計にフォローが出来ないよ――…