Virgin Snow
「……言いたい事はそれだけ?」


嵐はそう訊くと、ベンチから立ち上がった。


振られた……


もう、終わっちゃった……


あたしは泣きじゃくりながら、頭の片隅でそんな事ばかり考えていた。


「樹里……」


嵐に呼ばれて、あたしの体が強張った。


「言っただろ?あれは姉貴で、あの日は姉貴といただけ……」


あたしは頷く事もせずに、俯いたまま彼の話に耳を傾けた。


嵐は優しい声で、話を続けた。


「あいつと一緒に出掛けたのは、これを買ったからだよ」


そう言った彼に、赤いリボンが掛けられている箱を渡された。


「開けてみ?」


嵐はあたしの瞳を真っ直ぐ見つめながら、優しく笑った。


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