Virgin Snow
「樹里、待って!」


嵐はすぐに、あたしを追い掛けて来てくれた。


「ごめん……」


あたしの体を後ろから抱き締めて謝る彼の体温が、背中から伝わって来る。


「あたしは……そんな言葉が聞きたいんじゃないよ……」


俯いていたあたしの瞳からいくつもの涙が零れ落ちて、地面を濡らしていった。


「どうして……『好き』って言ってくれないの……?」


嵐は小さく深呼吸をすると、あたしの耳元で優しく囁いた。


「好きだから……」


「え……?」


「樹里の事が、本気で好きだから……。だから、言えなかったんだ……」


ねぇ、嵐……


それは本当……?


嵐はあたしの体の向きを変えると、もう一度あたしを強く抱き締めた。


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