ゴーストオブアイデンティティー
今度は火を着けず、ただ弄ぶ。幸福の手中で、煙草が踊っていた。

生き物のように蠢く煙草。
見ていて気持ち悪くなってきそうだ。

「そのクソ親父も………………既にいない。死んだからな」


「…実は…生きてるっていう可能性は?」

「ゼロだ」

即答。

「首を切り飛ばされて生きてる生物なんざ、ゴキブリくらいだ。ゴキブリ並の価値があるかも分からねえ。僕自身があいつを殺した」

桐は息を飲む。
狂気を孕んでいた。

自身に言い聞かせる。そんな、言い方。


言ってはいけないとは思ったが、思わずこぼした。


「幸福、あなた、座敷古傷が……………怖いの?」

「殺されたいのか?」


ぞわり。と。

素人の桐にでも分かるくらいの殺気が、幸福から放たれる。

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