ゴーストオブアイデンティティー
「…悪かったわ。ごめんなさい。触れられたくない事、人間なら誰でも1つくらいあるわよね」


桐は何故か素直に謝った。

そんなつもりは無かったのだが。
自然と、頭が下がった。


意外だったからだ。

今目の前に居る存在、世界の中心と言われ、神とまで言われた座敷幸福に、恐怖の概念がある事が。

そんな些細であり、大きな事であるものを持つ幸福が、


何処にでもいるような、「人」に感じられて。


「あなた…………人間なのね、やっぱり」

そう言って小さく含み笑いをした桐に、幸福は顔を反らし、舌打ちした。


「………うぜえ」

「なんとでもどうぞ。あ、さっきのもう一本、貰うわね?」

冷蔵庫を開け、瓶を取り出す。

何故だか少し気が楽になった。
幸福の「人間らしさ」を見たからかもしれない。

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