幕末Drug。

黄色い着物の袖を捲り、肩まで伸びた髪は二つに結ばれている。
つぶらな瞳に、綺麗な肌。…どちらかと言えば顔立ちは地味なタイプだけれど、可愛らしい感じのする人だった。

『来てくれたんですね…ありがとうございます!』

彼女は沖田さんの近くまで歩み寄ると、深々と頭を下げた。
その様子に沖田さんがはにかむように微笑んでみせる。

『もう気にしなくていいからさ?…それより、今日は友達を連れて来たんだ。』

沖田さんが私達へと振り返る。

『一之瀬さんに、高杉さん。後、この人が噂の鬼…じゃなくて、土方さん。友達じゃなくて、鬼上司。』

いきなりの紹介に、私と雛は頭を下げる。土方さんは沖田さんの嫌味な説明に僅かに眉をひそめた。

『…で、彼女が噂の藍さんか?』

無愛想な土方さんが問い掛ける。

『其の通り。』

沖田さんが人差し指を立て頷く。

『噂の…って?』

私達が問い掛けるより先に、藍さんが口を開いた。

『ああ、町で助けた女の子が江戸から遥々1人でやって来た子で…って話を土方さんにしてたんだよ。』

沖田さんが優しく笑いかける。

『…お前が一之瀬さんや高杉さんを連れて来たがってたのもこれが理由だな?』

『…そういう事。』

私と雛は意味が分からず、土方さんと沖田さんを交互に眺めた。


『歳も近そうだし…友達が居た方が、心強いっしょ?』

…ああ、そういう事かと私は納得した。

『…ありがとうございます。』

藍さんは刹那目を丸くし驚いた様子だったけれど、とても嬉しそうに笑顔を浮かべた。

『どうぞ、ゆっくりしていって下さい。今、お茶とお団子をお持ちしますね。』

店内の一番奥へと案内されると、私達は席についた。

『…藍さんはね、生き別れたお兄さんを探して此処まで来たんだよ。』

不意に沖田さんが口を開いた。

『お父さんは戦いで亡くなって…お母さんは1年くらい前に病気で亡くなったんだってさ。…それで、家出したって聞かされていたお兄さんを探しに京に来たって訳。』

『…それで、お前が何を世話したって言うんだ?』

土方さんが腕を組みながら問い掛ける。

『京の町に着いた時、彼女…不逞浪士に襲われてさ?それを巡回中だった俺が見つけた訳。』


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