幕末Drug。
部屋に着く頃には、沖田さんはいつも通りの表情に戻っていた。
『今、火点けるから。』
『あ…はい!』
手馴れた様子で、部屋の隅においてある行灯へと灯りを燈す。
『…はい、これで良し。それじゃ、今から着替えるから後ろ向いててね?まあ…見たければ其の侭でも良いけど。』
からかう様な口調に何処か含んだ笑みを浮かべ、沖田さんは躊躇することなく腰の紐に手を掛けた。
『…っ冗談止めて下さい!』
私はなるべく動揺を見せないように言葉を返すと、背中を向け障子の木枠へと視線を落とした。
『残念だなぁ…なーんて、ね。直ぐ終わるから。』
…何時も通りの明るい沖田さん。
…--でも
『熱、あるんですか?』
私はずっと気になっていたことを問い掛けた。
『んー…生きていられるくらいの熱なら。』
『ふざけないで下さい。…熱、高いんですか?』
『額に急須を乗せても沸騰しないくらいかな。』
『……。』
沖田さんは、完全に私の話をはぐらかすつもりらしい。
『風邪なら大人しく…』
『美穂ちゃん。』
叱ろうとした私の肩を、沖田さんが軽く叩く。
『何です…』
振り返ると同時に目の前に現れたのは、薄い灰色の着物を纏った沖田さんだった。
『…似合う?』
---愛想の良い笑みが、ムカツク。
『…似合い、ます。』
---呆気無く、私は沖田さんの問い掛けに頷いた。