王国ファンタジア【宝玉の民】-外伝-
思わぬ共通点を発見したドルメックは、ユリエスとそんな会話をする。
そんな中、マルタが頭を抱えて喚き出した。
「あぁっ!どぉしよぉ〜!
ドルメックって名前っ!小文字も入れて5文字だよ?
長いっ、長いけど、どう略したらいいか分かんないよっ!?
エナっ!私はどうしたらいいのっ?!」
台詞の後半からは、エナの両肩を掴んでガクガクと揺さぶっている。
今まで妙に大人しいと思っていたら、そんなことを考えていたらしい。
エナはそんなマルタの手を振りほどき、額に向かって激しいチョップをかます。
「…痛いじゃない、マルタ。
本人に、あだ名とか無かったか聞いてみれば?」
「っ!あったっ?!」
かなり強いチョップだった様で、勢い良くドルメックに向けた顔の額辺りが赤い。
ドルメックは言われている意味が分からず、思わずユリエスを見る。
苦笑いを浮かべ、肩を竦めて説明してくれた。
「マルタは長い名前の人にあだ名を付けて短い呼び名にするんです…。俺の名前すら長いって省略されたんで」
放っとくと、きっと騒ぎ続けるということも、付け加えた。
急にそんなことを言われても、困ってしまった。
暫く考え込み、自分のもう一つの顔に思い至る。
「じゃ、『ディー』とでも呼べばいい。
ドルメックの頭文字『D』で、闇の世界では盗賊『D』で通ってた」