王国ファンタジア【宝玉の民】-外伝-
ドラゴンの爪痕の残る街並みを歩く。
未だ街に留まり続ける住人達は皆一様に俯き、不安に表情を曇らせている。
彼らこそ、城に迎え入れ匿われるべき存在ではないのか。
ドルメックは陰鬱な感情に駆られた。
気持ちを切り替えるように、雷電の民を探すことに集中する。
教えられた特徴は、目深に被ったフード、背中に背負った大きな行李、不思議なイントネーション、美しい細工のキセルをくわえた小柄な少女。
この広い街で、見付けられるだろうか…。
取り敢えずは人の集まりそうな場所を中心に探すことにした。
ドルメックが足を向けたのは、城下町の中心にある噴水広場。
今はたいして人影もなく、水の止まった噴水が物悲しげに佇んでいた。
辺りを見渡す。
急に背後から声が掛けられた。
「あんさん、わしに用があるんやろ?」
驚き、振り返るドルメック。
そこには、教えられた特徴そのままの少女。
なぜ、探していると知っているのだろうか。
不思議に思って見詰める先の瞳は金色に光る。
「何で、それを知っているんだ?」
その問いに、口の端を吊り上げて笑う少女。
「それについては後で教えたる。
取り敢えず、ゆっくり話せる場所に移動せぇへんか?」
そう言うと、くるりと方向転換して歩き始めた。
仕方なく、ドルメックは少女の後についていった。