王国ファンタジア【宝玉の民】-外伝-



少女が連れて来たのは、人気の無い袋小路。
捨て置かれた木箱や瓦礫が散乱していた。

木箱の一つにヒョイッと座り、フードを外す。

先の尖った耳と、額に金と銀のマーブルの角が見てとれた。


「精霊が教えてくれたんや」

「…は?」


言われた意味が分からず、思わず聞き返していた。


「さっきの質問の答えや。

もう分かっとると思うけど、わしはクラウンや。
よろしゅうな!」


クラウンが名乗ってきたので、ドルメックもそれに習おうと開きかけた口は、音を発すること無く終わった。


「あんさんは、ドルメック…。
【宝玉の民】最後の生き残り、ドルメック・ジュエリアス…やろ?」


そのクラウンの言葉に、心臓が跳ね上がる。

“ジュエリアス”とは、【宝玉の民】の中でしか使われないドルメックの姓。

誰も居なくなった今、知る者はいない筈である。
これも、精霊からの情報なのだろうか…。


「……なんで…」

「あんさんが思うとる通りや。
わしに、聞きたいことがあるんやろ」


全てお見通しということらしい。

しかし、いざ問い掛けるとなるとどう話していいか分からなかった。


言葉に詰まって、何も言えないドルメック。




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