メモリー


しばらく考えていた子供たちだったけど、入れてくれたのは不信感より子供の無邪気さが勝っていたからだと思う。



「いいよ。お姉さんも一緒に競争しよう。」

「俺、負けねぇからな。」



満面の笑みを返してくれる子供たちは、本当に天使みたい。



あたしにも、こんな時代があったっけ。

純粋な笑顔を見てると、あの頃に戻りたくって仕方なかった。



「よーい。」




靴で引かれた、下手くそなスタートライン。



そこで静かに構えながら、真っ直ぐと前を見据える。




また、走れるだろうか。

ゴールまで、行けるだろうか。



あたしはあの時に戻った気持ちで、しっかりとゴールを見据えていた。






―――――――――…
――――――――…
―――――――…



『やったー!!!』




結果は、もちろんって言ってもいいぐらいの、あたしの圧勝。



小学生と高2。

少しは手加減するべきだったのかも。


小学生相手に本気で走ったあたしは、かなり大人気ないのかもしれない。




だけど、勝負は勝負。

走るなら本気で走りたい、そんな気持ちが頭を占領していたんだ。




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