メモリー



…なんて、呑気なこと考えていた時だった。




――くらっ


突然、頭が反転したような、激しい目眩に襲われて。


同時に込み上げてくるのは、言いようのない吐き気。




立つのが、辛い。
しゃがみたい。




体は心よりも素直で、崩れるようにあたしは、ストンと座り込む。




『……。』




走らなきゃ、よかった。



こうなることなんか、ちゃんとわかっていたはずなのに。

なんであたしは、バカなんだろう。




だけど、走りたかった。

また、この風を感じてみたいと、本気で思ったの。



死んだって、よかったんだよ。






――あたしは痛みに耐えられず、その場に崩れ落ちたのだった。





















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