Devil†Story
「ここか…」
俺は恐らく麗弥が居るであろう廃倉庫の前に居た。もう辺りはだいぶ暗くなってきた。
稀琉の奴は置いてきた。あの後、屋上を見ると半グレをボコボコにしている稀琉の姿があった。余程幽霊をネタにしていた事が、許せなかったのかしきりに「ねぇ分かった?怖い目に遭う気持ち。ねぇ?聞いてる?」と半殺しにしてる相手に問い掛けていたので、俺は何も言わず携帯で場所だけ送りその場を立ち去った。普段からあの位張り切ってくれれば少しはマシなんだがな。
その間に刹那へも報告を入れていた。刹那からは「クロムは大丈夫だと思うけどくれぐれも気をつけて」と言われただけだった。暫く待っていると聞き慣れた声が上から聞こえてきた。
「クロム!」
スタッ
屋根からやってきた稀琉が俺の横に着地した。
「来たか。…随分お楽しみだったようだな」
稀琉の上着は返り血で真っ赤になっていた。どうやらあの後もかなり痛ぶった様だ。
「だって聞いてよ!お化けのフリして悪い事してたんだよ!あの人達!許せないよ!」
「…全員殺ってきたのか?」
「今回はかなりお仕置きしてそのまま工場の裏に投げ捨ててきたよ!本当に許せない…!」
元の状態に戻った稀琉は頬を膨らませて怒っていた。…お仕置きとか言ってるがこれは確実に殺してる。あの場にいた半グレ達はもれなく全員稀琉のワイヤーの餌食になったようで死体も投げ捨ててきた様だ。稀琉のワイヤーで切られるという事は"バラバラ"になっている可能性が高い。現に稀琉の白かった上着は殆ど返り血で紅く染まっていた。
バラバラの死体が廃工場裏に散乱とか…お前が心霊スポット作ってどうすんだよという言葉は飲み込んだ。
「そういえばあの人逃がしてくれた?」
「いや…あいつもグルだったから殺してきた」
「嘘!?あの人もだったの!?」
「あぁ。俺達が見た吊るされた女もダミーだったぞ」
俺はあのババァが魔物であった事を伏せて事情を説明した。一通り聞いた稀琉は信じられないといった表情を浮かべていた。
「えー…全然そんな風には見えなかったんだけどなぁ…」
「お前は少し人を疑う事を学べ」
「うーん…あ!それよりも怪我とかない?」と稀琉は俺の顔を覗き込んできた。
「ねぇよ。あんな女に怪我なんかさせられっかよ」
少し前まで感じていた目眩やぼんやり感も消えていたので何も問題はない。
「そっか。なら良かった。…ここに麗弥が居るんだね」
稀琉が目の前の廃倉庫を見上げた。
「あぁ。多分ここに居る」
「気を付けて行かないとね」
稀琉が、指に付けている指輪の中からワイヤーを出してその先にポケットから取り出したダイヤ型の武器をつけながら言った。先程も使っていたが、稀琉の武器は特殊でワイヤーの様な物の先にダイヤ型の銀の重りをつけて使用する武器だ。普段は人を傷つけない為か、ダイヤの部分は付けずに生活しており、任務の時だけ中指につけている指輪の中に隠れているワイヤーにそれを付け、それで攻撃をする。
ワイヤーが自在に伸び縮みし、遠距離でも至近距離でも使え、しかもその見た目とは裏腹にかなりスピードがあり攻撃力もある。ワイヤーの部分も鋭いので巻き付けられればその部分は切れて血が出るし、力を込めればさっきの半グレ達の様にバラバラにすることも可能だ。稀琉以外では上手く操れなく、稀琉専用の武器と言っても過言ではない代物だった。
「行くぞ」
俺は稀琉が武器の用意が出来たのを確認しそう言った。
「OK」
稀琉が先に進んだ時、俺は伝言を頼まれたのを思い出してその背中に声を掛けた。
「そういや…お前が相手した半グレの中に道東って奴いたか?」
「え?…あぁ、そういえばリーダーっぽい人がそう呼ばれてたような…」
「そいつを痛めつけて殺してくれてありがとうだってよ」
「え!?もしかして誰かに見られてた!?」
「見られてたがそいつは大丈夫だ」
「ーー???え?誰がそんな事言ってたの…?」
「…そこにいた奴。とにかく伝えたからな」
俺はそれだけを言うと倉庫に向かって歩き出した。唖然とした稀琉だったがすぐ我に返り「え!?ねぇ!誰が言ってたの!?」と聞いてきた。俺は半分無視しながら「うるせぇな。さっさと行くぞ」と足早に倉庫の中に入った。
ーーーーーーーーーー
静かさを取り戻した先程に廃工場跡には朽ちて砂となった糸花の死体と、工場裏には大量のバラバラ死体が放置されていた。クロムと稀琉が吊るされた女を見た付近。その辺りに白いワンピースの女性が立っていた。
ー……………ー
ーーフッ
その女性はゆっくりと背景と同化し消えていった。
俺は恐らく麗弥が居るであろう廃倉庫の前に居た。もう辺りはだいぶ暗くなってきた。
稀琉の奴は置いてきた。あの後、屋上を見ると半グレをボコボコにしている稀琉の姿があった。余程幽霊をネタにしていた事が、許せなかったのかしきりに「ねぇ分かった?怖い目に遭う気持ち。ねぇ?聞いてる?」と半殺しにしてる相手に問い掛けていたので、俺は何も言わず携帯で場所だけ送りその場を立ち去った。普段からあの位張り切ってくれれば少しはマシなんだがな。
その間に刹那へも報告を入れていた。刹那からは「クロムは大丈夫だと思うけどくれぐれも気をつけて」と言われただけだった。暫く待っていると聞き慣れた声が上から聞こえてきた。
「クロム!」
スタッ
屋根からやってきた稀琉が俺の横に着地した。
「来たか。…随分お楽しみだったようだな」
稀琉の上着は返り血で真っ赤になっていた。どうやらあの後もかなり痛ぶった様だ。
「だって聞いてよ!お化けのフリして悪い事してたんだよ!あの人達!許せないよ!」
「…全員殺ってきたのか?」
「今回はかなりお仕置きしてそのまま工場の裏に投げ捨ててきたよ!本当に許せない…!」
元の状態に戻った稀琉は頬を膨らませて怒っていた。…お仕置きとか言ってるがこれは確実に殺してる。あの場にいた半グレ達はもれなく全員稀琉のワイヤーの餌食になったようで死体も投げ捨ててきた様だ。稀琉のワイヤーで切られるという事は"バラバラ"になっている可能性が高い。現に稀琉の白かった上着は殆ど返り血で紅く染まっていた。
バラバラの死体が廃工場裏に散乱とか…お前が心霊スポット作ってどうすんだよという言葉は飲み込んだ。
「そういえばあの人逃がしてくれた?」
「いや…あいつもグルだったから殺してきた」
「嘘!?あの人もだったの!?」
「あぁ。俺達が見た吊るされた女もダミーだったぞ」
俺はあのババァが魔物であった事を伏せて事情を説明した。一通り聞いた稀琉は信じられないといった表情を浮かべていた。
「えー…全然そんな風には見えなかったんだけどなぁ…」
「お前は少し人を疑う事を学べ」
「うーん…あ!それよりも怪我とかない?」と稀琉は俺の顔を覗き込んできた。
「ねぇよ。あんな女に怪我なんかさせられっかよ」
少し前まで感じていた目眩やぼんやり感も消えていたので何も問題はない。
「そっか。なら良かった。…ここに麗弥が居るんだね」
稀琉が目の前の廃倉庫を見上げた。
「あぁ。多分ここに居る」
「気を付けて行かないとね」
稀琉が、指に付けている指輪の中からワイヤーを出してその先にポケットから取り出したダイヤ型の武器をつけながら言った。先程も使っていたが、稀琉の武器は特殊でワイヤーの様な物の先にダイヤ型の銀の重りをつけて使用する武器だ。普段は人を傷つけない為か、ダイヤの部分は付けずに生活しており、任務の時だけ中指につけている指輪の中に隠れているワイヤーにそれを付け、それで攻撃をする。
ワイヤーが自在に伸び縮みし、遠距離でも至近距離でも使え、しかもその見た目とは裏腹にかなりスピードがあり攻撃力もある。ワイヤーの部分も鋭いので巻き付けられればその部分は切れて血が出るし、力を込めればさっきの半グレ達の様にバラバラにすることも可能だ。稀琉以外では上手く操れなく、稀琉専用の武器と言っても過言ではない代物だった。
「行くぞ」
俺は稀琉が武器の用意が出来たのを確認しそう言った。
「OK」
稀琉が先に進んだ時、俺は伝言を頼まれたのを思い出してその背中に声を掛けた。
「そういや…お前が相手した半グレの中に道東って奴いたか?」
「え?…あぁ、そういえばリーダーっぽい人がそう呼ばれてたような…」
「そいつを痛めつけて殺してくれてありがとうだってよ」
「え!?もしかして誰かに見られてた!?」
「見られてたがそいつは大丈夫だ」
「ーー???え?誰がそんな事言ってたの…?」
「…そこにいた奴。とにかく伝えたからな」
俺はそれだけを言うと倉庫に向かって歩き出した。唖然とした稀琉だったがすぐ我に返り「え!?ねぇ!誰が言ってたの!?」と聞いてきた。俺は半分無視しながら「うるせぇな。さっさと行くぞ」と足早に倉庫の中に入った。
ーーーーーーーーーー
静かさを取り戻した先程に廃工場跡には朽ちて砂となった糸花の死体と、工場裏には大量のバラバラ死体が放置されていた。クロムと稀琉が吊るされた女を見た付近。その辺りに白いワンピースの女性が立っていた。
ー……………ー
ーーフッ
その女性はゆっくりと背景と同化し消えていった。