Devil†Story
ヤナは顔を押さえたまま後ろに退け沿った。右肩から左腰に掛けてそれなりに深く切り込んでやったので、さっきまでのヘラヘラ顔は拝めなくなるだろう。
「これで俺の方がデカいの1発多く入れたな。…人間相手だからとなめてると気付かねぇうちに追い詰められてるかもしれねぇぞ。てめぇらが見下してる弱者に喉元食い千切られて吠え面かかないといいな?」
口内に溜まっていた血を吐き出し、同じように吐き出すように言い放った。
―――ピリッ
「!」
空気が変わった。先程よりも冷たく重い殺意が辺りに立ち込め、張り詰めた空気が体に纏わり付いた。
「アハ…アハハ……。たかが人間のくせに随分やってくれたねぇ……」
奴は顔から手を離した。その目は先程より光っており、まるで猫の様な縦長の瞳孔に変わっていた。…ついに本性表しやがったか。俺は無言のまま剣を構えた。
「いつの間にか飴はなくなってたねぇ…。ここまで持った事に敬意を評して…ここから俺も"本気"で相手するよ、クロム」
ペッと飴の棒を飛ばすと、隔てる物が無くなったからか今までよりも牙が大きく出てきた。額に手を当てて髪をかき上げ、怒りの籠もった目で俺を見る。
「…そいつはどうも」
「この殺気を目の当たりにしてもその態度…本当に凄いねぇ………虫唾が走るくらい。大事な眼鏡も飛ばしてさぁ…」
足元のに落ちていた眼鏡の状態を確認し始める。どうやら矯正用の眼鏡らしい。ジャケットの裾でレンズを拭いてから装着していた。
「頭に攻撃されたのはもちろん…眼鏡取られんの、俺すごーく嫌いなんだよねぇ。………後悔するなよ」
低い声でそう言った瞬間奴の姿は消えていた。
「…!」
目の前に光る物が見え、反射的に上半身を捻ると後ろの壁が壊れる音が響いた。視線をそちらに向けると壁に凹みが出来ており、その中心にあの投擲用のナイフが刺さっていた。
(チッ…。あいつ…何が熊だよ。これは熊以上だろうが。銃弾と大して変わんねぇぞ)
ーーヒュン
「!」
風の切る音が耳に届いた為、その場から駆け出す。まるでガトリングを撃っているかの様な勢いで飛んでくるナイフを避け続けた。
(当たったらひとたまりもねぇな。しかも…どっから投げてんのか分からねぇ…。軌道は追えてんのに少しも見えねぇ事あんのか?…いや俺に合わせて動き回ってやがるのか…クソ。体もさっきの骨折のせいか上手く動かねぇな…!)
前方から飛んできたナイフを避けた瞬間だった。
「……何処見てるの?こっちだよ」
ーードスッ!!!
「ッ…!!」
いつの間にか俺の左サイドに居た眼鏡が俺の左肩をナイフで貫いた。ナイフは根元まで深々と刺さっていたが、構わず剣を真横に振り切った。肩に刺さっていたナイフは抜かれ、また奴の姿が消えた。
(クッソ…!本当ナイフは見えんのに、眼鏡の姿は見えねぇな…!)
左肩から激しく出血し、左手の動きが鈍る。しかし休んでいる暇はない。左方向から再度ナイフが飛んできているのが見えたからだ。避ける為に踏み込んだ。
ーーグラッ
「…?」
一瞬視界が揺れた気がした。それを考える間も無く間近に迫るナイフが目に映りすぐに動き出す。幸いな事に背中を掠ったが当たる事はなかった。その後も雨のように降り注ぐナイフを避け続ける。立て続けにほぼ全力で動いているので息が段々と上がってきている。全力で動ける時間は残り僅かであった。
(このままだとジリ貧だな。一か八か…ナイフを弾いて突っ込むしかねぇか…。頭…足、心臓…この辺りだけ気をつけて後は捨てる)
覚悟を決めたクロムはナイフの軌道を見てからスピードを上げてナイフに向かって駆け出した。
「!?」
ヤナはクロムの行動に一瞬驚いた。その間に一定の箇所のナイフを剣で弾きながら距離を詰めていた。その過程でこめかみ辺りや腕や肩、腰辺りにナイフが当たっても構わず突き進んで行った。
ーー居た!!
ナイフの猛攻のその先…自身から見て中央にヤナの姿を捉えたクロムは更にスピードを上げ剣を振り上げた。
ーーガキィン!!!
「!」
上から振り下ろした剣をヤナは下から受けた。
「やっと見つけたぜクソ眼鏡…!好き勝手やってくれたな」
目を見開き剣に力を込めたクロムの額からボタボタと血が滴り落ちてヤナの顔に降り注いだ。
「驚いた…まさか見つかるなんて思ってもなかったよ。…でもいいの?俺に"餌"巻いて」
顔に滴り落ちたクロムの血液を舐めたヤナはすぐに余裕のある表情に戻った。今も尚も力んでる事により滴り落ちる血液を見て笑みを浮かべる。
「あぁ?勝手に食ってろよ。このままぶった切ってやーー」
ーーグニャア
「…!?」
再び視界が揺れた。それは先程よりも強く、強い目眩にも似ている状態だった。
(またか…!血を流しすぎたか…?)
視界が揺れている時間が伸びており、押し込んでいた力が僅かに弱まった。その一瞬の隙をヤナは見逃す訳がない。
「どうした!?力が弱まってるよ!?」
「…ッ…!!」
両手で抑えていたナイフから片手を離し激しく出血しているクロムの左肩に指を突っ込んだ。手についた血液をクロムの目を目掛け振りかけ、同時に腹部に蹴りを入れた。
「ッ…!?クソが!」
自身の血液が目の中に入り一瞬視界が奪われたクロムは、蹴られた勢いで後ろによろけながら乱暴に袖で目を擦った。若干ぼやけるつつも、目を無理やり開けて周りを見るも既にヤナの姿はそこになかった。
(何処に行った!?)
周りを見渡すが奴の姿は見当たらない。
その時――
「今度は剣もーらいッ!」
真後ろから声がしたのと同時に剣を蹴り飛ばされた。
「!?」
その衝撃は強く俺は意識を目に集中させていた事もあり、剣から手を離してしまった。
ヒュン ヒュン…ザクッ!
剣は回転しながら遠くに飛び地面に刺さった。
「チッ…!」
舌打ちをして肘打ちをするが傷がある左腕で行ったので力が入り切らずにいとも簡単に受けられてしまった。奴はそのまま後ろから抱き締める様に俺の体に手を回した。
「本当ッ…首も細いねぇ」
「ッ…!このっ変態…!離せ!」
「振り解いてみなよ。まあ無理だろうけど。いつまでもお預けは好きじゃないからねぇ。お先に…いただきまーす」
コートをずらしたのと同時に……
ガブッ
「!!」
俺の首に噛みついた。
「これで俺の方がデカいの1発多く入れたな。…人間相手だからとなめてると気付かねぇうちに追い詰められてるかもしれねぇぞ。てめぇらが見下してる弱者に喉元食い千切られて吠え面かかないといいな?」
口内に溜まっていた血を吐き出し、同じように吐き出すように言い放った。
―――ピリッ
「!」
空気が変わった。先程よりも冷たく重い殺意が辺りに立ち込め、張り詰めた空気が体に纏わり付いた。
「アハ…アハハ……。たかが人間のくせに随分やってくれたねぇ……」
奴は顔から手を離した。その目は先程より光っており、まるで猫の様な縦長の瞳孔に変わっていた。…ついに本性表しやがったか。俺は無言のまま剣を構えた。
「いつの間にか飴はなくなってたねぇ…。ここまで持った事に敬意を評して…ここから俺も"本気"で相手するよ、クロム」
ペッと飴の棒を飛ばすと、隔てる物が無くなったからか今までよりも牙が大きく出てきた。額に手を当てて髪をかき上げ、怒りの籠もった目で俺を見る。
「…そいつはどうも」
「この殺気を目の当たりにしてもその態度…本当に凄いねぇ………虫唾が走るくらい。大事な眼鏡も飛ばしてさぁ…」
足元のに落ちていた眼鏡の状態を確認し始める。どうやら矯正用の眼鏡らしい。ジャケットの裾でレンズを拭いてから装着していた。
「頭に攻撃されたのはもちろん…眼鏡取られんの、俺すごーく嫌いなんだよねぇ。………後悔するなよ」
低い声でそう言った瞬間奴の姿は消えていた。
「…!」
目の前に光る物が見え、反射的に上半身を捻ると後ろの壁が壊れる音が響いた。視線をそちらに向けると壁に凹みが出来ており、その中心にあの投擲用のナイフが刺さっていた。
(チッ…。あいつ…何が熊だよ。これは熊以上だろうが。銃弾と大して変わんねぇぞ)
ーーヒュン
「!」
風の切る音が耳に届いた為、その場から駆け出す。まるでガトリングを撃っているかの様な勢いで飛んでくるナイフを避け続けた。
(当たったらひとたまりもねぇな。しかも…どっから投げてんのか分からねぇ…。軌道は追えてんのに少しも見えねぇ事あんのか?…いや俺に合わせて動き回ってやがるのか…クソ。体もさっきの骨折のせいか上手く動かねぇな…!)
前方から飛んできたナイフを避けた瞬間だった。
「……何処見てるの?こっちだよ」
ーードスッ!!!
「ッ…!!」
いつの間にか俺の左サイドに居た眼鏡が俺の左肩をナイフで貫いた。ナイフは根元まで深々と刺さっていたが、構わず剣を真横に振り切った。肩に刺さっていたナイフは抜かれ、また奴の姿が消えた。
(クッソ…!本当ナイフは見えんのに、眼鏡の姿は見えねぇな…!)
左肩から激しく出血し、左手の動きが鈍る。しかし休んでいる暇はない。左方向から再度ナイフが飛んできているのが見えたからだ。避ける為に踏み込んだ。
ーーグラッ
「…?」
一瞬視界が揺れた気がした。それを考える間も無く間近に迫るナイフが目に映りすぐに動き出す。幸いな事に背中を掠ったが当たる事はなかった。その後も雨のように降り注ぐナイフを避け続ける。立て続けにほぼ全力で動いているので息が段々と上がってきている。全力で動ける時間は残り僅かであった。
(このままだとジリ貧だな。一か八か…ナイフを弾いて突っ込むしかねぇか…。頭…足、心臓…この辺りだけ気をつけて後は捨てる)
覚悟を決めたクロムはナイフの軌道を見てからスピードを上げてナイフに向かって駆け出した。
「!?」
ヤナはクロムの行動に一瞬驚いた。その間に一定の箇所のナイフを剣で弾きながら距離を詰めていた。その過程でこめかみ辺りや腕や肩、腰辺りにナイフが当たっても構わず突き進んで行った。
ーー居た!!
ナイフの猛攻のその先…自身から見て中央にヤナの姿を捉えたクロムは更にスピードを上げ剣を振り上げた。
ーーガキィン!!!
「!」
上から振り下ろした剣をヤナは下から受けた。
「やっと見つけたぜクソ眼鏡…!好き勝手やってくれたな」
目を見開き剣に力を込めたクロムの額からボタボタと血が滴り落ちてヤナの顔に降り注いだ。
「驚いた…まさか見つかるなんて思ってもなかったよ。…でもいいの?俺に"餌"巻いて」
顔に滴り落ちたクロムの血液を舐めたヤナはすぐに余裕のある表情に戻った。今も尚も力んでる事により滴り落ちる血液を見て笑みを浮かべる。
「あぁ?勝手に食ってろよ。このままぶった切ってやーー」
ーーグニャア
「…!?」
再び視界が揺れた。それは先程よりも強く、強い目眩にも似ている状態だった。
(またか…!血を流しすぎたか…?)
視界が揺れている時間が伸びており、押し込んでいた力が僅かに弱まった。その一瞬の隙をヤナは見逃す訳がない。
「どうした!?力が弱まってるよ!?」
「…ッ…!!」
両手で抑えていたナイフから片手を離し激しく出血しているクロムの左肩に指を突っ込んだ。手についた血液をクロムの目を目掛け振りかけ、同時に腹部に蹴りを入れた。
「ッ…!?クソが!」
自身の血液が目の中に入り一瞬視界が奪われたクロムは、蹴られた勢いで後ろによろけながら乱暴に袖で目を擦った。若干ぼやけるつつも、目を無理やり開けて周りを見るも既にヤナの姿はそこになかった。
(何処に行った!?)
周りを見渡すが奴の姿は見当たらない。
その時――
「今度は剣もーらいッ!」
真後ろから声がしたのと同時に剣を蹴り飛ばされた。
「!?」
その衝撃は強く俺は意識を目に集中させていた事もあり、剣から手を離してしまった。
ヒュン ヒュン…ザクッ!
剣は回転しながら遠くに飛び地面に刺さった。
「チッ…!」
舌打ちをして肘打ちをするが傷がある左腕で行ったので力が入り切らずにいとも簡単に受けられてしまった。奴はそのまま後ろから抱き締める様に俺の体に手を回した。
「本当ッ…首も細いねぇ」
「ッ…!このっ変態…!離せ!」
「振り解いてみなよ。まあ無理だろうけど。いつまでもお預けは好きじゃないからねぇ。お先に…いただきまーす」
コートをずらしたのと同時に……
ガブッ
「!!」
俺の首に噛みついた。