Devil†Story
「ノン、ノン♪それは当たり前の事だよ。吸血鬼ならね。…あんな奴等と一緒にされたら困るけどねぇ」
手を左右に上げて首を振っている。同族に話をしていると言うのに、心底バカにしたような表情を浮かべている姿に軽蔑が込められているのが感じ取れた。
あんな奴等…?その表情からして…どう見ても下に見てやがるな…。ロスから聞いた情報は…そんなもんだった気がするが……。
「俺が言いたいのはそういう事じゃないの。でも、本当良かったよ。…まんまと罠にかかってくれてさ」
「罠……?」
罠というワードに蜘蛛女が言いかけた言葉を思い出した。
―ヤナ様は純血の……―
「純血……」
俺がその言葉を呟くと奴はまた卑しく笑った。
「あれ?そこまであのクズに聞いたのかなぁ?ピンポーン♪君達、人間が知っている吸血鬼…あれは俺達の本当の姿じゃない。あんな血を吸うだけで基本的な事しか出来ないクズなんて本当は吸血鬼と言いたくはない。だって、あいつらには…君達の血が入っちゃってる……汚れた奴等なんだからさ」
君達と言うのは“人間”の事だろう。
「…人間の血が…混ざってる…から…バカにしてやがんのか…」
「その通り♪まあ、吸血鬼寄りのクォーターならまだ良いけどねー。今の吸血鬼は殆どハーフとかクォーターとか…何処かで“人間”と混じってしまってるのが多いんだよねぇ。でも…その中でも居るんだよ。数はだいぶ減ったけど……吸血鬼の血筋が。そう…俺みたいにね。その血筋の事を“純血”と言うんだよ」
「改めて…初めましてクロム。俺はヤナ•ルガト。君達が滅多に見る事が出来ない純血の吸血鬼だ」と先程のように胸に手を当てて頭を下げる。月明かりが雲に隠れ暗くなった倉庫内だが、ヤナの金色に光る目は変わらず輝いていた。
「わざわざ…ご丁寧に…どうも…。アンタが拘ってる純血の…吸血鬼は……どう特別……なんだよ…」
「フフ…純血の吸血鬼には個々に“能力”がある。俺のはこれだけじゃあないけど…牙から麻痺系の“毒”が分泌される様になっている。もちろん好きな時に分泌できるよ。その毒が今、君を苦しめている正体だ」
口を開けて牙を指差すとそこから赤い液体が滴り落ちていた。その液体が地面につくとシュウと音を立てて蒸発している。
クソ…毒か…。酷い目眩と体の痺れの中、噛まれた箇所に熱を感じる。
噛まれた時に温もりを感じたのは毒を注入されてたから、首を押さえた時に血が止まらないと感じたのはその毒液が溢れていたからと気付いたクロムは歯軋りをした。
あのクソ悪魔…!変な心配するくらいなら…吸血鬼の正確な情報を言ってけよ…!息を切らしながら俺はロスに対する怒りをぶつけるように奴を睨み付けた。
ーー戻って魔界。
「ーーなるほど。この疫病の蔓延が魔物の仕業と人間(かれら)は思ったんですね」
テストを終えたエルはノートにメモをしながらロスに確認をとっていた。テストの結果はロスがひっかけ問題を出していたのにも関わらず満点であった。それが面白くなかったのかロスは何処か不満気に返事をしていた。
「そー。こん時はここが出来たばっかの影響で大半の魔物も力を失ってたからねー。相打ちになる時もあったかなぁ」
「ここですね。それなりに魔物も大打撃を受けてしまったのは俺には信じられませんけど。今はある程度力を取り戻していますからね」
「まあジュニアには想像出来ないよなー。こん時は結構酷かったんだぜー。特に吸血鬼とか狼男とか」
適当に相槌を打っていたロスは歴史書に手を触れており、その間にエルはメモをとっていた。寝そべった状態で本をパラパラめくっていた時だった。
「……あー!!!しまった!!」
「わっ…!!」
突然のロスの大声にエルは驚きのあまり椅子から落ちそうになっていた。
「どっどうしたんですか?」
「あいつ(クロム)に純血の吸血鬼の話してなかった…。数も少なくなってきてるからすっかり忘れてたわー」
頭を掻きながらロスは本に描かれている吸血鬼の姿絵を見て呟いた。そこにはある村で起きた人間と吸血鬼の惨劇が描かれており、姿絵の吸血鬼はその時の状態のイメージ画であった。
「えっと…ロスさんの今の契約者の人間(かた)ですか?」
「え?あっそうそう。今、人間界で魔物が出ててさー。バトる可能性があったから吸血鬼の話はしたんだけど…純血の吸血鬼の話だけすんの忘れてたー。あいつら個々の能力あるからなー…。やられてなきゃいいんだけど…」
「あちゃー。やっちまったなー」と額を押さえていたロスだったが少し考えた後。
「…まあ大丈夫っしょ。そんなピンポイントで純血の奴が来たりしないだろうしな!ハハハッ。悪いなジュニア。続きやろうぜ」
何事もなかったかのように笑ってきたロスだったが、まさにその純血の吸血鬼とクロムが戦って劣勢を強いられているとは思いもしていなかったのであった。
手を左右に上げて首を振っている。同族に話をしていると言うのに、心底バカにしたような表情を浮かべている姿に軽蔑が込められているのが感じ取れた。
あんな奴等…?その表情からして…どう見ても下に見てやがるな…。ロスから聞いた情報は…そんなもんだった気がするが……。
「俺が言いたいのはそういう事じゃないの。でも、本当良かったよ。…まんまと罠にかかってくれてさ」
「罠……?」
罠というワードに蜘蛛女が言いかけた言葉を思い出した。
―ヤナ様は純血の……―
「純血……」
俺がその言葉を呟くと奴はまた卑しく笑った。
「あれ?そこまであのクズに聞いたのかなぁ?ピンポーン♪君達、人間が知っている吸血鬼…あれは俺達の本当の姿じゃない。あんな血を吸うだけで基本的な事しか出来ないクズなんて本当は吸血鬼と言いたくはない。だって、あいつらには…君達の血が入っちゃってる……汚れた奴等なんだからさ」
君達と言うのは“人間”の事だろう。
「…人間の血が…混ざってる…から…バカにしてやがんのか…」
「その通り♪まあ、吸血鬼寄りのクォーターならまだ良いけどねー。今の吸血鬼は殆どハーフとかクォーターとか…何処かで“人間”と混じってしまってるのが多いんだよねぇ。でも…その中でも居るんだよ。数はだいぶ減ったけど……吸血鬼の血筋が。そう…俺みたいにね。その血筋の事を“純血”と言うんだよ」
「改めて…初めましてクロム。俺はヤナ•ルガト。君達が滅多に見る事が出来ない純血の吸血鬼だ」と先程のように胸に手を当てて頭を下げる。月明かりが雲に隠れ暗くなった倉庫内だが、ヤナの金色に光る目は変わらず輝いていた。
「わざわざ…ご丁寧に…どうも…。アンタが拘ってる純血の…吸血鬼は……どう特別……なんだよ…」
「フフ…純血の吸血鬼には個々に“能力”がある。俺のはこれだけじゃあないけど…牙から麻痺系の“毒”が分泌される様になっている。もちろん好きな時に分泌できるよ。その毒が今、君を苦しめている正体だ」
口を開けて牙を指差すとそこから赤い液体が滴り落ちていた。その液体が地面につくとシュウと音を立てて蒸発している。
クソ…毒か…。酷い目眩と体の痺れの中、噛まれた箇所に熱を感じる。
噛まれた時に温もりを感じたのは毒を注入されてたから、首を押さえた時に血が止まらないと感じたのはその毒液が溢れていたからと気付いたクロムは歯軋りをした。
あのクソ悪魔…!変な心配するくらいなら…吸血鬼の正確な情報を言ってけよ…!息を切らしながら俺はロスに対する怒りをぶつけるように奴を睨み付けた。
ーー戻って魔界。
「ーーなるほど。この疫病の蔓延が魔物の仕業と人間(かれら)は思ったんですね」
テストを終えたエルはノートにメモをしながらロスに確認をとっていた。テストの結果はロスがひっかけ問題を出していたのにも関わらず満点であった。それが面白くなかったのかロスは何処か不満気に返事をしていた。
「そー。こん時はここが出来たばっかの影響で大半の魔物も力を失ってたからねー。相打ちになる時もあったかなぁ」
「ここですね。それなりに魔物も大打撃を受けてしまったのは俺には信じられませんけど。今はある程度力を取り戻していますからね」
「まあジュニアには想像出来ないよなー。こん時は結構酷かったんだぜー。特に吸血鬼とか狼男とか」
適当に相槌を打っていたロスは歴史書に手を触れており、その間にエルはメモをとっていた。寝そべった状態で本をパラパラめくっていた時だった。
「……あー!!!しまった!!」
「わっ…!!」
突然のロスの大声にエルは驚きのあまり椅子から落ちそうになっていた。
「どっどうしたんですか?」
「あいつ(クロム)に純血の吸血鬼の話してなかった…。数も少なくなってきてるからすっかり忘れてたわー」
頭を掻きながらロスは本に描かれている吸血鬼の姿絵を見て呟いた。そこにはある村で起きた人間と吸血鬼の惨劇が描かれており、姿絵の吸血鬼はその時の状態のイメージ画であった。
「えっと…ロスさんの今の契約者の人間(かた)ですか?」
「え?あっそうそう。今、人間界で魔物が出ててさー。バトる可能性があったから吸血鬼の話はしたんだけど…純血の吸血鬼の話だけすんの忘れてたー。あいつら個々の能力あるからなー…。やられてなきゃいいんだけど…」
「あちゃー。やっちまったなー」と額を押さえていたロスだったが少し考えた後。
「…まあ大丈夫っしょ。そんなピンポイントで純血の奴が来たりしないだろうしな!ハハハッ。悪いなジュニア。続きやろうぜ」
何事もなかったかのように笑ってきたロスだったが、まさにその純血の吸血鬼とクロムが戦って劣勢を強いられているとは思いもしていなかったのであった。