Devil†Story
いつの間にか俺には“闇”の中に居た。真っ暗な闇の中で立っていた。さっきの倉庫も…奴の姿もない。何処だここ…。


―血―


また声がした。誰だ…?何処かで聞いた事がある声だ。だが……思い出せない。声の主は何処にいるか分からない。辺りを見渡すもただ闇が広がるだけであった。


“誰”かが、また話す。


―求メロ。血ヲ。オ前ニ必要ナモノナノダカラー


ーービチャッ


暗闇に"紅色"が現れる。それはぶちまけられた血痕の様な形をしていた。


必要な物………



ーービチャッ


段々と増えていく紅色に釘付けになる。


―違ウノカ?―


いや……違わない……。俺に必要なのは……


ーービチャッ


黒だった世界に紅色が段々と支配し始めている。


―ソウダロウ。オ前ノ為二俺ガ手伝ッテヤル―


手伝い……?


黒と紅色しかないこの場所に問い掛ける。


―ソウダ。オ前ノ目的ノ為ニナー


その言葉と共に目元を何かが覆ってきて再び暗闇が辺りを包み込んだ。姿は見えないが触られている感触は何となくあり、片方の腕が俺の胸の中に入ってくるのを感じる。普段なら触られている時点で拒否するが、それを受け入れるように俺は身を委ねていた。何故だかは分からない。だが…………。自身の望んでいる物を理解していたからかもしれない。次の瞬間ーー。


ーードクンッ!


今までで1番強く胸が高鳴った時、クロムの目元を覆っていた何かは手を退けた。目の前にあったのは"紅"だけだった。



ーサァ…モット“闇”ニ堕チロ。……クロム―


その声を最後にブツンと俺の視界は紅に支配された。















ーー突然、視界が鮮明になった。さっきの倉庫に戻っている。


「…………」


そこである異変に気付く。アレだけ痛みや熱を感じていた体が今はなんともない。寧ろ、調子が良かった。掌を見ると先程手枷を外した時に一緒に取れてしまった手袋の代わりに視界を支配していたあの色が付いていた。


「どうした!?もう動けないのかな!?」


奴の声が上から聞こえた。恐らく跳んでナイフを振り上げ、俺の胸辺りを狙っているのだろう。そうクロムは何処か遠くで考えていたが、視線をヤナに向ける事はなかった。一心不乱に掌のそれを見続けていた。ナイフが振り下ろされるのを感じた。俺はそれを……


ブシュッ!


「!?」


左腕で受け止めた。自身の掌に付いていた、それよりも大量のその色に俺は魅了されていた。
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