Devil†Story
「クッ……」
ヤナは腹部を押さえながらクロムを睨みつける。割れたレンズに映るクロムは幾重にも重なって見える。クロムはヤナを見ておらずまた掌を見つめていた。正確にはヤナに攻撃した際についた返り血をだが。
「…………」
「……?」
徐ろに掌を口元に持っていったクロムは舌舐めずりをするかのように唇を舐めて湿らせた。そして返り血と自身の血がついた手を舐めていた。
「…!!」
ヤナは再び驚愕していた。血を舐めたクロムが薄ら笑いを浮かべていたからだ。まるで恋人でも見ているかのような笑みを浮かべ、ヤナがいる事など忘れているかのようにそれに夢中になっている。その姿はどう見ても普通の人間ではなかった。
驚愕していたヤナだったが、奥歯を噛み締めてナイフを構えた。
「このッ…!狂人が…!!そんなに血が好きなら自分のでも…見てろよ!!」
最後の力を振り絞って突撃する。目だけでヤナを見たクロムはヤナが目の前に来た瞬間に切りつけた。
「ガッ…!!」
再度同じような所を深く切られたがヤナは引かなかった。純血の吸血鬼としてのプライドだけで歯を食いしばってクロムの左肩にナイフを突き刺してから下に振り抜いた。その際に血印に傷がついた。
ーーバチッ!
「!!」
クロムの目が大きく見開かれ、後ろによろけた。
「グッ…!!ッ…!!!」
先程の狂気を帯びた笑みは消え、胸部を握り締めていた。血印から流れ出たその痛みはかなりの苦痛を伴っているようで苦しそうにしている。
逆にヤナも同じように後ろによろけ、地面に膝をついて傷口を押さえた。両者共にすぐには動けない状態となる。
ーードクン
心音が大きく鳴り響いたのと同時にクロムは再びあの闇の中に引き摺り込まれていた。呆然としているとまた声がした。
ーオット。コレ以上血印ガ暴走シタラ面倒ダ。マァ今回ハ、コンナモンダナ。上出来ダッタゾ、クロム。俺ハ、オ前ノソノ姿ガ成長スルノヲ………。モット闇ニ染マル、ソノ時ヲ楽シミニシテイルヨ―
声が段々聞こえなくなった。次の瞬間、段々意識がハッキリしてきた。
「…!」
俺は目を瞬かせた。いつの間にか倉庫に戻っており、体の痛みや灼熱感、疲労感も戻っていた。
なんだったんだ…?今のは……。
「……クソッ…気持ち悪ぃ……」
血印が放った痛みに胸を強く押さえながら悪態をついた。その様子は元のクロムであった。それを見たヤナは舌打ちをする。
「チッ……今頃…戻ってくるなんて……運が悪い…」
眼鏡の悪態が聞こえてきて視線を向けると苦しそうに傷口を抑え、俺を睨みつけていた。
「トランス状態かなんだったか知らないけど……やってくれたねぇ……ゲホッ……。クソッ…流石に…きついな……。まさか…契約者とはいえ…人間に…やられるなんてね…。ここは一旦退かせて貰うよ……。でも…これで終わりだと思ったら大間違いだからな。君にはまだ用があるんだ。あいつから……解放する為に……」
立ち上がったヤナはそのまま出会った時に座っていた2階の窓へ跳んだ。
「あ?待て!まだ決着がついてねぇだろーーッ…」
追おうとするも全身に戻ってきた痛みや目眩で体が動かなかった。
「…一時休戦にしようじゃないか。……また会おうクロム。お互いに万全な時にねぇ…。次こそ…決着をつけてやるよ………」
奴はそう言い残し窓から身を翻して、明るくなってきた外に消えて行った。
「おい!…チッ……逃げられたか」
どのみち…この傷ではこれ以上戦うのは無理か……。
「…にしても……。さっきのは……なんだったんだ…」
眼鏡はトランス状態って言ってたが…それならあの声は一体なんだったんだ?俺自身が作り出したもの?…いや違う。確かに“意思”のある奴の声だった。どこかで聞いた事のある声なんだが………ダメだ。頭が回らねぇ…。俺は胸を押さえながら奴が消えた窓を見た。
外はほんのり明るくなってきている。
朝になる前に……戻らねぇと稀琉達に見つかる…。それになんだか体が凄く疲れた……。早く帰って寝ねぇと……。俺は傷ついた体に鞭を入れながらカフェに戻った。
ヤナは腹部を押さえながらクロムを睨みつける。割れたレンズに映るクロムは幾重にも重なって見える。クロムはヤナを見ておらずまた掌を見つめていた。正確にはヤナに攻撃した際についた返り血をだが。
「…………」
「……?」
徐ろに掌を口元に持っていったクロムは舌舐めずりをするかのように唇を舐めて湿らせた。そして返り血と自身の血がついた手を舐めていた。
「…!!」
ヤナは再び驚愕していた。血を舐めたクロムが薄ら笑いを浮かべていたからだ。まるで恋人でも見ているかのような笑みを浮かべ、ヤナがいる事など忘れているかのようにそれに夢中になっている。その姿はどう見ても普通の人間ではなかった。
驚愕していたヤナだったが、奥歯を噛み締めてナイフを構えた。
「このッ…!狂人が…!!そんなに血が好きなら自分のでも…見てろよ!!」
最後の力を振り絞って突撃する。目だけでヤナを見たクロムはヤナが目の前に来た瞬間に切りつけた。
「ガッ…!!」
再度同じような所を深く切られたがヤナは引かなかった。純血の吸血鬼としてのプライドだけで歯を食いしばってクロムの左肩にナイフを突き刺してから下に振り抜いた。その際に血印に傷がついた。
ーーバチッ!
「!!」
クロムの目が大きく見開かれ、後ろによろけた。
「グッ…!!ッ…!!!」
先程の狂気を帯びた笑みは消え、胸部を握り締めていた。血印から流れ出たその痛みはかなりの苦痛を伴っているようで苦しそうにしている。
逆にヤナも同じように後ろによろけ、地面に膝をついて傷口を押さえた。両者共にすぐには動けない状態となる。
ーードクン
心音が大きく鳴り響いたのと同時にクロムは再びあの闇の中に引き摺り込まれていた。呆然としているとまた声がした。
ーオット。コレ以上血印ガ暴走シタラ面倒ダ。マァ今回ハ、コンナモンダナ。上出来ダッタゾ、クロム。俺ハ、オ前ノソノ姿ガ成長スルノヲ………。モット闇ニ染マル、ソノ時ヲ楽シミニシテイルヨ―
声が段々聞こえなくなった。次の瞬間、段々意識がハッキリしてきた。
「…!」
俺は目を瞬かせた。いつの間にか倉庫に戻っており、体の痛みや灼熱感、疲労感も戻っていた。
なんだったんだ…?今のは……。
「……クソッ…気持ち悪ぃ……」
血印が放った痛みに胸を強く押さえながら悪態をついた。その様子は元のクロムであった。それを見たヤナは舌打ちをする。
「チッ……今頃…戻ってくるなんて……運が悪い…」
眼鏡の悪態が聞こえてきて視線を向けると苦しそうに傷口を抑え、俺を睨みつけていた。
「トランス状態かなんだったか知らないけど……やってくれたねぇ……ゲホッ……。クソッ…流石に…きついな……。まさか…契約者とはいえ…人間に…やられるなんてね…。ここは一旦退かせて貰うよ……。でも…これで終わりだと思ったら大間違いだからな。君にはまだ用があるんだ。あいつから……解放する為に……」
立ち上がったヤナはそのまま出会った時に座っていた2階の窓へ跳んだ。
「あ?待て!まだ決着がついてねぇだろーーッ…」
追おうとするも全身に戻ってきた痛みや目眩で体が動かなかった。
「…一時休戦にしようじゃないか。……また会おうクロム。お互いに万全な時にねぇ…。次こそ…決着をつけてやるよ………」
奴はそう言い残し窓から身を翻して、明るくなってきた外に消えて行った。
「おい!…チッ……逃げられたか」
どのみち…この傷ではこれ以上戦うのは無理か……。
「…にしても……。さっきのは……なんだったんだ…」
眼鏡はトランス状態って言ってたが…それならあの声は一体なんだったんだ?俺自身が作り出したもの?…いや違う。確かに“意思”のある奴の声だった。どこかで聞いた事のある声なんだが………ダメだ。頭が回らねぇ…。俺は胸を押さえながら奴が消えた窓を見た。
外はほんのり明るくなってきている。
朝になる前に……戻らねぇと稀琉達に見つかる…。それになんだか体が凄く疲れた……。早く帰って寝ねぇと……。俺は傷ついた体に鞭を入れながらカフェに戻った。