Devil†Story
――その頃 クロム Side―

ヤ「グッ…!」

ヤナが後ろによろけた。

ク「どうした?この間よりも随分と弱くなったもんだな」

頬についたヤナの返り血を舐めながら、俺は問う。

ヤ「ハァ…ハッ…」

ク「――その息切れのせいか?」

こいつは俺と戦う前から息を切らしていた。その事が関係ないとは思えなかった。

ヤ「ハァ…フフ…やれやれ…。急かすねぇ、クロム。そんなに早く俺を倒したって…面白くないだろうに」

ク「そりゃあ、他の弱っちぃ人間相手にするよっかはマシだけどな…飽きるんだよ、てめえの相手ばっかしてると」

ヤ「ククッ…そう」

ク「随分余裕だな、殺られかけてんのによ」

ヤ「まだ倒れるわけにいかないんでね…さて、仕方がないけど、コレを使うかな」

そう言ってヤナは上着の内ポケットに手を入れて、黒っぽいドクロと月と薔薇となんだか英単語が書かれたラベルが貼ってある小瓶を取り出した。

ヤ「これなーんだ?♪」

ク「…酒?」

目をこらして、よく見てみると、書いてある英単語は“Moon Rouse”だった。

“Moon”は“月”で“Rouse”は…確か“覚醒”だったな。

酒の名前が月の覚醒…?大体、酒なんか取り出して何するつもりだ?

そんな俺の心を知ってか知らずかヤナは説明をしていく。

ヤ「ピンポーン♪正解。これは俺の力を引き出す秘薬であり美酒♪」

キャップを回し、蓋を飛ばす。

ク「ふん…秘薬ねぇ…」

ヤ「止めないんだ?力上がるって言ってるのに」

ク「そのまま弱ったお前をいたぶり殺したってつまんねーから。どんだけ強くなるか知らねぇが所詮、酒による偽りの力だ。大した事はねーだろうし」

俺の言葉に奴は目を丸くさせてから高笑いし始めた。
ヤ「ククッ…本当に戦いにしか目がないんだね、クロム。――あいつの言う通りだ」

ク「――あいつ?」

あの死神のガキが言ってた“あの人”と同じ奴だな。

聞き返したが案の定奴は「さぁ?誰でしょう?」と答えただけだった。

ヤ「それより、後悔しなよ。偽りと言った力が…俺の本当の力がどれだけのものかね」

――ゴクッ

小瓶に口をつけて、中の液体を飲み干す。

血とアルコールの匂いが鼻についた。

――ドクン

ク「!」

辺りの空気が変わった。ビリビリと空気が震える。

ヤナの体にも変化が現れた。

爪は猛禽類のように鋭くなり、口も先ほどより裂け、そこから見える牙は鋭さを増した。

何より、変わったのはヤナの目。まるで、猛獣が怒り狂った様に瞳孔が縦に変わっていた。

ヤ「…覚悟してよね、クロム」

そう奴が言った時には奴の姿は見えなかった。

ク「!」

動こうとした時にはヤナが目の前で手を振り上げていたところだった。

ク「ッ!!」

ドカァン!!!

辺りに土埃が舞った。
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