Devil†Story
―クロム Side―

ヤ「グッ…!」

ナイフが弾かれ、ヤナが後ろによろけた。

ヤ「ハァ…ハァ……!」

苦しそうに息を吐いている。

ク「……」

グッと手に力を入れ、剣の力を元に戻した。

貧血が酷いが余裕で歩けそうだ。

なんとか、血を吸い尽くされる前に終われたな…。

ヤ「何…してんの?今、剣を戻したら負けちゃうよ?」

苦しそうにしながらも、ヤナは悪態をついた。

その時だった。

――ドックン

ヤ「ウッ…ゲホッ…!!」

ビチャッ

ク「!」

口から血を吐き出すヤナ。手で口を押さえているが、何かの感染症を起こしているかの様に鼻からも血が流れている。

ク「…限界が来たようだな」

クロムは静かにヤナにそう言った。

ヤ「ハァ…ハァ……!」

ボタボタボタ……

血は留まることを知らないかの様に流れ出す。

ヤ「クソ…!“リバウンド”か…ッ…!」

膝をつきながら、ヤナは呟く。

ク「…やっぱりな。それ飲んでから…アンタ、異常に強くなってたからオカシイとは思ってたんだ。確かに薬を使えばアンタの力を引き出すんだろうなとは思ってた。でも、今のはそれを明らかに越えてる。強くなるにはそれと同様の代価が必要だろ。アンタの身体エネルギーや俺の血だけだったら…その比率が合わない。そこで思った。その酒…アンタの命を代償にするんだってな」

ヤ「………」

ヤナはクロムを睨み付ける。

その体は震え、今にも倒れそうだ。

ク「前に俺に命がどうのこうのと垂れときながら…自分は命を大切にしてないのか?」

ヤ「…フフ…うる…さい…ね…。お…れは…負けるわけ…に…いかないんだ……。例え…死のうと…守らなきゃ…ならない…人が居るんだから…」

ググッと体を起こす。

あちこちから血が流れている。

ク「ハッ…今のアンタなんか蟻を踏み潰すのと同じだぜ。殺す価値もない」

ヤ「ククッ…それは…どうかな…?」

ジャケットからまたあの酒を出し、キャップを開けた。

それを見たクロムは呆れた様に言った。

ク「やめときな。例えそれを使って俺を半殺しにできたとしても…俺を連れて行く前にアンタがくたばっちまうぜ」

ヤ「煩い…よ…。どのみち…俺には…後がないんだ…」

――キィン

ク「!」

ヤナの首辺りに何かが浮き出てきた。奴のナイフにもある、あのマークだ。

ヤ「時間が…ないんだ…。だから…さっさと、捕まってよね…!」

ゴクッ

小瓶の中身を一気に飲み干した。
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