Devil†Story
ロ「………」

ロスは少しだけ穏やかな顔で2人を見ていた。

稀「…ねぇ、ロス」

不意に稀琉が話しかけてきた。

ロ「何?」

稀「なんで、ロスは…あの人が麗弥に血を入れようとする前まで…何もしなかったの?」

稀琉の問いにロスは「んー」と少し考えてから答えた。

ロ「だってさ、確かに俺が戦いに入ったら早く決着がついただろうけど…それじゃあ意味がないなって思ったから」

稀「意味がない?」

ロ「そう。俺が入ってあいつをさっさと殺す方がきっとカンタンだったけど…それで麗弥は良いのかなって思ってさ」

稀「!」

稀琉はハッとしたように麗弥を見た。確かにロスが入ればこれほど苦戦することなく醜鬼を殺すもしくは捕獲することはできただろう。しかしそれは麗弥が今まで戦ってきたことを無駄にすることであり、きっとロスが決着をつけたら麗弥は一生悔やんだままこれから先を生きなければならなくなっただろう。


それに気付いた稀琉は「じゃあ…オレはやっちゃいけないことしちゃってたんだね…」と悲しそうに呟いた。


あの時は麗弥を守ることで頭がいっぱいで手を出したがそれが逆に麗弥を苦しめることになってしまったのが辛いのだろう。

そんな稀琉にロスは「んー…確かにそうかもしれないけど、あの時の稀琉も間違ってはいないと思うんだよなー」と言った。


稀「なんで?」


ロ「だってあの時、稀琉が戦わなかったら…怪我しなかったらきっと麗弥は迷ったままだったと思うんだ。自分の為にやってくれたその事実が大切なんだと思うけどね」


そうあっさり言うロスだが、ロスの言葉は説得力がある。そして…こういう時ロスは嘘をつかない。稀琉はそれを知っていたので、微笑みながら「…ありがとう、ロス」と言った。

ロ「どーいたしまして」

そう言ったロスだったが、内心はクロムのことでいっぱいだった。さっきの混乱で、行けなかったがクロムが気になった。


剣を解放したようだし、あのクロムの異変は戦いの途中で消えていたが、吸血鬼よりクロムの気の方が強くなっていたので問題はないが…やはり気になる。ロスは稀琉に話しかけた。

ロ「悪い稀琉。ちょっとクロムんとこ行ってくる」


ロスの言葉に稀琉は「えっ?ロス、クロムの場所知ってるの?」と聞いた。


ロ「あぁ。実はここに来る前にこの間の眼鏡が居てさ。クロム、そいつと戦ってたから…大丈夫だとは思うけど様子見てきたいんだ」


稀「そうなの!?大丈夫。ここはオレが見てるから。早くクロムの所に行ってあげて」


「腕は大丈夫だから」と言う稀琉に「あぁ。後は任せたぜ〜と言って、ロスはクロムが居る倉庫に向かった。

……何もないといいけど。


ロスはそう思いながら、倉庫に向かって走った。
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