Devil†Story
ロ「…………」


談話室を後にしたロスはなんとも言えない表情で暗い廊下を歩いていた。ここに来て長くなってきたからつい油断してしまっていたが…俺は好意でここにいる訳ではない。それなりにここは嫌いじゃないし居心地は良いけど……俺に必要なものは1つだけだ。


部屋できっとしかめ面であの本を読んで「…やっぱやめとけば良かったな。悪くはねぇけど」と呟いているであろう人物を思い浮かべる。


ロ「…まぁ話したし二度とそんなこと起こらないと思うけどな」


刹那は頭が切れるから今頃「触らぬ神に祟りなし」と思っているところだろう。…それでいいんだ。とほくそ笑む。


ロ「……あいつの目的を果たせるのはこの俺だけ…。他に邪魔するものがあれば……排除するだけだ」


ーーゴキン


手の甲の骨が鳴った。その姿を見てしまったのは夜空に浮かぶ星空だけであった。ふと部屋にあった黒い薔薇を思い出す。


ロ「…さて。次も何やら不穏な影が近付いているようだから気を引き締めておくかな」


花瓶にさされている異質な薔薇の意味を頭に浮かべた。


ロ「ーー黒薔薇の花言葉は……」













ーー変わってクロムの自室。


しかめ面で一通り桜の中の水を読んだクロムはパタンと本を閉じた。


ク「…やっぱやめとけば良かったな。悪くはねぇけど」


なんとも綺麗すぎる物語に溜め息をつきながら本棚に戻した。今度あいつに返すかと思いながら起き上がると花瓶が目に入った。


月の光を浴びて輝くその黒い花弁は何処か血を連想させる色合いをしていた。黒薔薇は繊細で綺麗に咲かせるのに手間のかかる花だ。しかし鮮やかな色の花が多い中、その黒はなんとも言えない美しさを奏でている。


辺りが暗くなったのに今気付いたクロムは「…あいつ何処行ったんだか」と契約主を思い浮かべた。同時に最後に会話していた言葉を思い出して再び黒薔薇を見てから目を閉じる。


ク「……黒薔薇の花言葉は……」




















「「貴方を恨みます」」













2人が花言葉を口にしたのは同時であった。
スッとクロムの目が開かれる。その目に映るのはまるでこれから起こる黒い未来を物語っているようだった………。



【第5夜 Reiya 完】
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