Devil†Story
ロ「ハイハイ。じっとしててねー」

ロスはまた指を立てながら、ヤナに近付いた。

ロ「大丈夫だよ、お嬢さん。すぐ終わるから」

そう言うと、さっきと同じように呪文を唱え、ヤナの首に手をかざした。

――バチッ

ヤ「ッ…!」

シュウ…と、マークが消えていった。

ロ「ハイ、それプラス…体に溜まった“毒”を出してやるよ」

スッと手をかざし、ヤナの胸に手を入れた。

ヤ「ッ!!」

クロ「ヤナ!」

ロ「ダイジョブ、ダイジョブ。ちょっと痛いけど、俺、治癒能力あっから」

そう言うと、ヤナの中から何かを引きづり出し始めた。

ヤ「ッ!!!」

クロ「ヤナ…!」

痛みに顔を歪めるヤナを心配そうにクローディアは見ていたが、やがてロスが中から何かを引きづり出した。

ヤ「…!」

そして、すぐに左手を胸の上にかざした。

すると、傷はあっという間に消えてなくなった。

ロ「ハイ、とれたぜ。吸血鬼のお前に…この量の“銀”は寿命を縮めていくだけだからな」

そう言って見せたのは握りこぶしくらいの銀塊を見せた。

ヤナくらいの吸血鬼になると、世間一般で言われている“十字架”や“にんにく”くらいじゃ何もない。

しかし、吸血鬼は銀で作られているものは毒で、体内に入れると、吸血鬼の力が覚醒されるが体内に入れることは自殺行為だ。

先程の酒には、血の他に冥福の銀が混ぜられていた。

ヤナは自らの命を犠牲に力を手にしていたのだ。呪いが解け、体内から銀がなくなったその体は軽かった。

クロ「ヤナ…?大丈夫なの!?体、なんともない!?」

クローディアが、じっとヤナを見た。

ヤ「…あぁ、なんとも…ない」

アレほど辛く重かった体が嘘のように軽くなった。

クロ「良かったぁ…!」

ギュッとヤナに抱き着く、クローディア。

やっと、本当に安心したのか目から涙が絶えることなく流れている。

ヤ「…すまない、クローディア」

ヤナは目を瞑りながら優しく、クローディアを抱き締め返した。

ロ「お〜、ハッピーエンドってやつ?おめでとー」

ロスがぱちぱちと拍手しながら、言った。

ク「随分、優しいな、ロス」

ロ「いやー、嫌嫌、戦わされてたみたいだし?何より、まだクロムに手を出してなかったからさー、それだけ」

ク「ふーん」

クロムはいまだにヘルを掴んだまま呟いた。

ヘ「あ…あのー…」

ク「…あっ?」

相変わらず冷たい目でクロムはヘルを見た。
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