Devil†Story
その後、クロムはプンプン怒りながら、ロスと部屋に戻り、麗弥とも別れた。

部屋には刹那と二人きり。

「……刹那」

「ん?」

刹那は紅茶に砂糖を入れながら聞き返す。

「あ…あのさ、刹那…オレ……」

何かを言いにくそうにしている稀琉に刹那は優しく微笑みながら答えた。

「……稀琉。何も言わないで。大丈夫」

刹那の優しい言葉に稀琉は安心したように、息を吐いた。

「でも、良かった…。蔑まれなくて…」

「それは大丈夫だよ。…あの子達も、それぞれ抱えている十字架があるんだから、他のそういうことを言う人間とは違うよ。君にとって大きな悩みでも…彼等にとっては“そんなこと”なんだから」

稀琉にとっては、とても重要なこと。でも、クロム達にとっては“そんなこと”。

なんだか、稀琉は少しだけ肩の荷が降りた気がした。

なんか…あんなことでパニックになって…情けないや。

稀琉は静かに笑うと、刹那に「ありがとう」と言った。

「フフ…良いんだよ。とりあえず、少しゆっくり休んで行きなよ」

そう言うと、刹那は稀琉にミルクティを渡した。

「あ、ありがとう」

稀琉はミルクティを受けとると、カップに口を付けて飲んだ。

「…甘い」

「刹那さん、スペシャルブレンドだからね」

「……お酒、入ってないよね?」

怪訝そうに聞く稀琉に刹那は盛大に紅茶を吹き出した。

「や…やめてよ、稀琉!そんなことしないよ、流石に!」

吹き出した紅茶をティッシュで拭き取りながら刹那は慌てて言い返した。

その様子に稀琉もクスリと笑った。

「アハハ。冗談だよ」

「本当に…キミは俺の親かって」

刹那はティッシュで口を拭きながらブツブツと文句を言った。

「……ねぇ、刹那。刹那のお母さん達って…どんな人だったの?」

「えっ?…あぁ、仕事一筋な人達だったよ。このカフェはさ、俺が13の時に親父が死んだときに受け継いだ店なんだ。このカフェは代々俺の家庭に受け継がれていたカフェだから」

突然の稀琉の問いにきょとんとしながら、刹那は答えた。

「優しかった?」

「んー、どーだろ…。厳しい人達だったな。親父は、俺が幼い時から仕事の手伝いさせてたし…母さんは、殆ど俺と顔を合わせなかったし」

「そんな、小さな時から?」

「そ。…よっぽど大事だったんだろうね。このカフェが」

刹那はそう他人事のように呟いた。
< 373 / 539 >

この作品をシェア

pagetop