やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】
それから2時間後、やっと使い慣れてきた屋敷の自分の部屋の荷物を簡単にまとめる私。
私の使っていた部屋は、運良く、火事の被害も、水浸しにもならずにすんでいた。
コンッコンッ
「はいッ。」
部屋のノックする音に返事をする私。
「入りますよ。」
入ってきたのは、執事だった。
「・・・・龍一さん。」
私は、執事の顔を見て、悲しくなり、泣きたくなったが、追い出されるわけを考えると、執事に泣きつくわけにもいかない。
必死に泣かないように我慢する私。
「小夜さん、お金の入った銀行のカードを渡しておきますね。」
私は、執事からカードを受け取った。
その瞬間、執事は、私を優しく抱きしめた。
突然のことに、体が凍りついたように動かなくなる私。
私の体には、その私の凍りついた体を溶かすかのような、温かい執事の体のぬくもりが伝わってきた。