PEACE



「放せ! 私から離れろ!」

奈久留がそこでみたのは、例の男達に囲まれているあの女性だった。

「大人しくしろ!」

女は、後ろで腕を組まさせ、廃墟の壁に押し付けられていた。

「お前を殺せと命令されてんだ。あんまり騒ぐと、楽に死ねないぞ?」

中心核であろう男が、騒ぎ立てる女の髪を鷲掴み、壁に頭を強くたたき付ける。

その衝撃で、フードが頭から落ち、頭のてっぺんで一つに纏められた金の髪が顔を出した。

「――っ」

気が遠くなるような痛みだろう。

女は朦朧とした意識を、必死に繋ぎ止めようと唇を噛み締めているせいか、血が滲み出ている。

「悪あがきはよせ、瀬梛(せな)」

髪を鷲掴んでいる男が、女を瀬梛と呼んだ。

「本当に、お前は惜しい女だよ。顔も体も極上だしな。どうだ? どうしてもって言うなら、助けてやってもいいぜ? 俺の女になるんだったらな」

返ってくる言葉をわかりきっているかのように、男は余裕の笑みで言った。

「はっ。お前みたいなゲス男の女になるんだったら、死んだほうが増しだ」

額に汗を滲ませながら、瀬梛は鼻で笑った。

「っ! ……そうか。それは残念だ。お前がそんなに死にたがっていたなんて、
知らなかったぜ」

そして、男は腰に隠し持っていた小刀に、手を伸ばす。

「さよならだ、瀬梛」

男が大きく腕を振り上げた、その時だった。
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