PEACE
「私は茜遙瀬梛(せんようせな)。瀬裡は私の、双子の妹なんだ」
席についた二人と一匹は、静かに瀬梛の話を聞いていた。
「瀬裡は昔から不思議な力を持っていた。それを街のやつらは知っていたが、誰も悪用しようだなんて思わなくて、平和だったんだ。それも、今の町長に変わってから、街は変わった」
虚ろな瞳で語る瀬梛は、どこか悲しげに見える。
「瀬裡の力を知った町長は、瀬裡を暗黒ノ世界の奴らに売ろうとしているんだ」
「暗黒ノ世界だと?」
雪夜が眉間に皴を寄せた。
「ああ。どうやら、暗黒ノ世界の奴らがこの取引を持ち出してきたらしい。瀬裡を引き渡
せば、高額の金が手に入る。町長は、金と引き換えに瀬裡を渡そうとしているんだ。そして、期限は明日」
「明日!?」
急な内容に、奈久留は驚きを隠せなかった。
「お前は、どうしたいんだ」
雪夜が瀬梛に問い掛ける。
「瀬裡を、……取り戻す。だけど、私だけでは無理に決まっている。だから、お前達に手伝ってほしいんだ」
強い決意を示した瞳だった。
「断る」
「え!?」
予想に反した答えを、雪夜は言った。
「どうしてだ!」と焦る瀬梛。
だが、雪夜は答えない。
奈久留は、その理由に気付いていた。
(――私だ。私が、内国の王女だから。暗黒ノ世界の者達が、絡んでいるからだ)
ただでさえ、危ない身なのだ。
雪夜は、奈久留のことを思っての判断なのだ。
(だけど……)
――見捨てるの?