憂鬱ノスタルジア
「ジゼル可愛いよなぁ
何かこう…食べちゃいたい感じに」
呑気に馬車に座っていたノワール、店から出てきたレインをニヤニヤしながら見ていた
「お前のエサではないよ……」
「わかってるさ、ご主人のエサには手をつけないよ」
「ならいい…仲良くしてやってくれ」
レインの言葉に驚いたノワールだったが、小さく「ああ」と頷いた
繰り返される毎日に
退屈していたのは皆同じ
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「大変お似合いですよ!」
「こちらもお試しくださいませ」
一方のジゼルは、着せ替え人形状態だった
─どれも似合わない気がするのに……
試着室の鏡に映る自分の姿に溜め息を吐く
どのワンピースも黒髪に良く映えていたが
鏡を見たこともなかったジゼルは気分を落としてしまった
─私の髪…気持ち悪い…
「お客様、いかがでしょうか…?」
「は、はい…大丈夫です…!」
いきなり問いかけられ慌てて頷くと
背後でワンピースの裾を直していた店員が鏡に映り、優しくジゼルに微笑みかける
しかしジゼルは鏡越しに見てしまった
人間にはない、口元から見える"牙"を
欲するような熱い視線を
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