憂鬱ノスタルジア


「まさか………」
─ヴァンパイア…?

自分でも語尾が震えているのが解る



「我慢できないわ…

こんなに美味しそうなんですもの」


「ゃ……」



首筋を舐められ、恐怖で声が出せず足が震える


狭い試着室では逃げることが出来ない









そして首筋に



"鋭い牙"が



当てられるのが見えた
















店の外にいたレインは、むせかえるような"血"の甘い匂いに瞬時に悟る



「おい、やばい…!」


ノワールが振り返ったときには、もうレインの姿はなかった









「たまらないわ―…この甘い味…。

あなた本当に、ノスタルティなのね……?
味見だけじゃ足りないわ」



どうやら、本当にジゼルがノスタルティなのか調べるために味見をしたようだった



ジゼルは魔力により意識を奪われグッタリしたまま床に倒れている









「お前、馬鹿だな

俺のものだと知らずに手を出したのか

哀れなヴァンパイアよ」


不意に足音が聞こえ振り向くと

鼻で笑いながらも怒りのオーラを纏ったレインの姿があった


そして周りの空気が一気に冷える




「まさか、そんなつもりは…私は頼まれただけよ!」



その姿が、レインだと解った瞬間
ヴァンパイアは一気に青ざめ、体を震わせ後ずさりをする



「誰に頼まれた」


「い、言えないわ」


れでも、自分を雇った主(あるじ)の名前は言えないのか悔しそうに唇を噛み締める




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