憂鬱ノスタルジア



「そうか残念だ」



そう呟き、レインが手を翳すと悲鳴を上げながらヴァンパイアは黒い灰へと一瞬で変貌を遂げた



人間の店員達は恐れをなして逃げ出したようで、店の中には異様な雰囲気が漂っていた





「ジゼル……」




倒れているジゼルに駆け寄り息を確認する
意識は戻っていたが息は荒く、瞳は恐怖により涙で揺らいでいた




ジゼルを抱き寄せたレインは、傷口に優しく舌を這わせる



「嫌―……!」


「大丈夫だ。目を閉じろ」


強張り逃げようとするジゼルを抱き寄せ、安心させようと慣れない手つきで頭を撫でる


傷口は浅く、レインが舌で舐めあげると傷口は塞がっていく


完全に傷口が塞がったことを確認したレインは、ジゼルをそっと抱きかかえた






─なぜ下層ヴァンパイアが人間に化けていることに気づかなかったんだ…くそっ……




本来ならば、ヴァンパイアの気配など直ぐに気づくはずだった




─ジゼルの甘い匂いに、俺の頭もやられたか…




レインは自嘲気味にフッと笑い、店先を出た







「ノワール、馬車に乗せられるだけ店の服を持ってこい

金は置いてある」





「たく、わかったよ。」

レインの腕の中でグッタリしたジゼルに驚いたノワールだが


小さく頷き店内に消えた




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