プラチナの誘惑
「大学時代から昴の事知ってるけどね」

ふっと優しい声。
逢坂さんの瞳も声と同じく優しい。

「昴にはずっと女の子が側にいて、…まぁ楽しそうに遊んでてね」

「…」

「あまり聞きたくないかもしれないけど、そりゃもうモテるモテる。
本人もあまり深く考えてなかったな…。
でも、偶然同じ会社に入社してきた昴は少し変わってた」

「変わってた…?って」

私が知る限り、昴が女の子に人気があるのは今も同じだけどな…。

大学時代を知らないから何とも言えないけど…。

「会社に入ってからは、女の子と遊んだり、誘われたりしても本心からは楽しそうにしてないし…自分から積極的に動く事もなくて、すべて受け身に恋愛してた。

これに関しては、さっきの優美ちゃんと付き合ってた時も例外じゃなかったのよ」

思い返すようにゆっくりと…何かを伝えるみたいな口調は穏やかで。

穏やかでない私の心にも落ち着いて届いてくる。

優しい…。
逢坂さんは優しい…。
分け隔てなく同じ態度で接してくれる逢坂さんの話す言葉には嘘はなくて
少し緊張しながらも、しっとりと私の胸にも染み入ってくる…。
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