プラチナの誘惑
「優美ちゃんは、確かに素敵な女性だし昴にしても大切に思う存在だと思う…。

でも、飲みに行って遅くなった女の子をわざわざ迎えに行くほどには気持ちは傾いてなかった。

ただ、大切に思うだけなのよ。…優美ちゃんの事はね」

安心させるような笑顔を私に向けて、軽く頷いた逢坂さんは

「…私ばかりしゃべってたわね。
彩ちゃんがどう受け止めたにしても…きっと、彩ちゃんが深く暗く悩むほどの問題なんてないのよ。
恋愛以前に、昴との今までと、彼自身をまっすぐに考えれば…ちゃんと
わかるから。ね」

…そう優しく言われても、不安になる事に慣れている私にはあっさりと
逢坂さんに言われたように気持ちは切り替えられない。

ただ、言葉の中で唯一ひっかかった…。

「あの…飲みに行った女の子を迎えに行く…って。それは…もしかして私の事ですか?
逢坂さんのお宅にお邪魔したあの夜…」

疑問形で尋ねながらも、期待と一緒に待つ答えが返ってくるように…。
逢坂さんの言葉を待った。

「…ふふっ。
そうね、あの夜…黙秘権を使った…ってのが答え。大学時代も含めて、聞かれれば何でも軽く答えてた昴にとっては…冗談ででも曖昧には言えない相手…彩ちゃんの事ね…
本当に大切にしてるって思ったよ」

初めて。
期待して…落ち込まない答えをもらった気がして…心も体も震えた。
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