プラチナの誘惑



新しい『布絵本』の見本があがってきた。
前回の作品が好評で、第二弾。

業者から届けられた見本は、淡いピンクをメインカラーに据えて植物の成長の物語。

週末の会議までに最終確認をして生産に入る。
手元の絵本に見入りながら、宣伝部をしばらく離れる寂しさを少しだけ感じる…。

3個ある絵本のうち、一つを茶封筒に詰めて。

「設計部に行ってきます」

言い残して席を立った。

胸に抱くように茶封筒を持つと、慣れない緊張が体中に溢れてくる。

昼休みの逢坂さんとの話以来、昴の事についつい気持ちは傾きそうになるけれど。

きっと今夜も昴の部屋で過ごすから…。
その甘いはずの時間を癒しにして仕事に気持ちを切り替えないと…。

受け取ってくれるかな…。

布絵本の出来には自信がある。
自分がメインに立って形にした作品。
時間も愛着もかなり注いで仕上げた。

表紙の桜の花びらが、私にお願いをしているように思えて、どうしても、たとえ不安でも。

届けたい…。

設計部に向かう私の緊張感は、最高潮。

それでも…。
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