プラチナの誘惑
そう言った途端に切られた携帯を呆然と見ながら動けず…。

迎えにくるって…どういう事なんだろ。
電話の声みたいに機嫌の悪いままで来てくれても…どう反応していいのかもわからないし。

それに。

夕べ二人で飲んだ後。
今思い出しても恥ずかしくなるキスを交わしてしまった事が…昴に会う事をためらわせてしまう。

夢中で昴にしがみついて
キスに深く応える私に

「…続きは今度な」

昴にしても息の上がったままの声で優しく私を落ち着かせてくれた。

頬に触れる指先の震えに気づいた時に、昴の気持ちにもそれほど余裕がないってわかって。
少し嬉しくなった。

恋愛に慣れてそうな昴には、キスなんて大きな意味はないって思うと切なくなる。
それでも、昴の落ち着かない吐息と震える指先が、私の気持ちをほんの少しだけ楽にしてくれた。
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