プラチナの誘惑
電話の向こうから聞こえる男の声に、一瞬で気持ちの振り子が振り切れてしまった。
飲み会だとすぐわかる弾けた雰囲気の中にいる彩香を想像した途端に声は低くなって
「迎えに行く」
と言っていた。
日付も変わりかけた頃家に帰った後、明日の時間を決める事を理由に彩香に電話をした。
呼出音の途切れた後聞こえた彩香の声は焦っていて、
「壮平」
と呼び掛ける声を聞いて
営業部の宴会の途中なんだと気づいた。
自分の意思がどう動いたのかなんて覚えていない。
気づけば車に飛び乗って
彩香がいる店へ向かっている。
シャワーを浴びて、着替えた後でよかったと…。
思わず苦笑する自分を不思議に思いながら…
彩香に会いに行く気持ちは優しかった。