プラチナの誘惑
「とりあえず車乗って」

隣を歩く彩香にため息とともに言うと、くすくす笑いながら

「昴の事あんなに好きに言う女の人初めて見たよ」

「…笑いすぎだし。
大学の先輩で、サークルも一緒なんだ。
ずっとあんな調子で俺の事いじめて楽しんでる」

「へぇ。初めて聞いた。
本社じゃなかなか営業部の人と密な接点持てないからね…。
ビルも違うし」

そうだ…。
営業部とはビルが違うから、毎日食堂で見かけるって事も、帰りに偶然会う事もなくなる…。
彩香との接点は今とは比べられないほどになくなってしまう。

「…逢坂さん送ってあげるなら、私タクシーで帰ってもいいよ」

は?
俯いて言う彩香の言葉に
むかつく気持ちを抑えこみ、無言でその腕を掴む。

「ちゃんと送るから。
詩乃先輩の後になるけどいいよな」

反論も何も受け入れるつもりもなく、助手席に彩香をおしこんだ。

後部席にちゃっかり座る詩乃先輩は、

「黙秘権行使したってわかっちゃうもんねー」

と舌を出して笑って。

はあ…。
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