先生のビー玉
「大丈夫。
兄貴だから…ごめんね、急に来てもらって」

車に乗り込むと申し訳なさそうに言う恭子。

「す、すみません…」

か細い声で言う佳奈に、

「いいや、仕事が終わった頃だったからな。
で、家まで?学校まで?」

と聞く恭子の兄の祐樹。

「えっと…」

「家まで。
今から学校に行ったって無理。
思考回路めちゃくちゃになってるはずだから」

「了解」

そう言うと、祐樹はゆっくりと車を発進させた。

「奴…迎えに来てないんだよね?」

佳奈に聞く恭子。

「今日は会議があるって言ってた」

「そう、車も…停まってなさそう?」

「ん?来る時も今も車は停まってないな」

「そ、ありがと」

恭子が礼を言うと、佳奈の家に到着すまで沈黙が続いた。

「彼女もいろいろと大変だな」

祐樹はそう呟いていた。


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