雨のあとに
それからあたしは船が出る日まで宮殿で過ごした。アレクの客人として手厚く歓迎されて宮殿の人たちにアレクの話をたくさん聞いた。

アレクは小さい頃は真面目で立派な王になると期待されていたんだけど、カカロン王が今の王妃と結婚してキスカが産まれてから王妃に邪魔者扱いをされてきたらしい。最近では宮殿を抜け出したりしてカカロン王を困らせたりしているみたい。

あたしが中庭を散歩していると中学生ぐらいの男の子が近づいてきた。

『あなたが最近来られた兄さんのお友達のアメさんですよね。僕は弟のキスカです。』

『そうだけど、あたしに何か?』

『兄さんが面白い方だといつも話しているので一度お会いしたかったのです。』

丁寧な子だなー、王妃の息子とは思えない。きっと父親に似たのね。

『あなた、王様になりたいの?』

『母はそうしたいと思っていますが僕はあまり興味がなくて。』

『そうなんだ。あなたもアレクも大変だね、王様になりたくないのに周りが勝手に騒いで。』

『正直僕は兄さんに継いでもらいたいと思っています。兄さんは昔から僕を助けてくれていたし、母がどんな態度でも決して怒ったりしません。自分のことより周りのことを優先する、そんな人なんです。』

『キスカはアレクのこと好きなんだね。アレクもキスカなら良い王様になるって言ってたよ。』

『僕はダメです。親の言いなりで反発する勇気もありません。アメさん、ずっと兄さんのお友達でいてください。アメさんが来てから兄さんは明るくなったような気がするんです。僕がいるせいで兄さんに辛い思いをさせているのに僕には何もできない。』

『もちろん。だけどキスカ、何もできないってことは無いと思うよ。キスカがアレクの為に何ができるかじゃなくて何をしてあげたいかが大切なんだと思うな。』

『そう・・・ですね。ありがとうございます、僕にも兄さんの為に何かできるような気がしてきました。本当にアメさんは兄さんの言う通り素敵な人ですね。』

『そんなことないって、照れるからよしてよ。』

それからキスカは勉強があるからと行ってしまった。あたしはアレクの部屋に戻った。
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