おにぎり丼。
オレンジ色の照明が心地よいホテルのロビー。

革製の黒いソファに深く座り、私は人を待っていた。


「お待たせ」

ぽんと後ろから肩を叩かれた。


黒いフェイクレザーのコートを着た細身の男だ。

店長……ヒトシだ。


「それじゃ、行こうか」


ヒトシはポケットからキーを取り出して私に見せる。

私は黙って立ち上がる。


毎週木曜日の恒例となった一連のやりとりだ。


私たちはホテルの前に停めてある軽自動車に乗り込む。


ヒトシの車だ。

燃費が良いらしい。


いつもの、夜景がきれいに見えるスポットに車を移動させて、コーヒーを飲む。

コーヒーは、ヒトシが店から持ってきたものだ。

冷めないように魔法瓶に入っている。


「じゃあ始めようか」


「はい」


「新製品のことは何かわかったかい?」


「秋の新製品は栗かのこバーガー丼と甘栗シェイクです」


「ほう。そうきたか。レシピはわかるかい?」


「はい。メモをとってきました」


「助かるよ。これをもとにして、もっとおいしいメニューを考えるよ」


「楽しみです」


「それと、嫌がらせをする余裕は出てきたかな?」


「はい」

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