【短】雪の贈りもの
あ……。

謝らなきゃならないし。

落としたプリンは私が買わなきゃならないし。

500円は返さなきゃならないし。

でも今はポケットに入れていた500円しか持っていないし。

財布は忘れてきた。

焦った私は急いで手を動かしてみたけれど、単純じゃない言葉はうまく伝わるはずもなく。

戸惑いを隠しきれずにいた時、彼は携帯を取り出し、画面を指差した。

『ここに書き込んでもらえますか?』

私はそれを見て、こういう時の為に、小さなメモ帳とペンはいつもポケットに入れていた事をやっと思い出した。

彼の顔を見上げれば、やっぱり変わらない優しい笑顔。

その温かさに、胸の奥がポッと熱くなるのを感じる。

そして、ポケットのメモ帳はしまったまま、好意に甘えて携帯を受け取り

『先日はすみませんでした。払っていただいたお金はお返ししたいのですが、今500円しか持ち合わせていなく、落としたプリンも私が払わなければならな』

と書き込んだ。

と言うより書き込んでいる途中で、画面を上から見ていた彼が私の手を止めた。


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