【短】雪の贈りもの
彼は見上げた私に向かって、身振りを加え、ゆっくり大きく口を動かす。

『これは、僕が驚かせて落ちたプリンなので、僕が買います。ちょうどプリンを食べたくて来たものですし』

今度はプリンの容器をぐるりと見回して

『中身は無事です』

と、初めて見た時と同じようにクルッと瞳を転がし、笑った。

まるで、初めてプリンを見つけた子猫のように。

『ぷっ』

私はそんな彼を見て、思わず吹き出した。

『先日のルミエールも、僕がショーケースを揺らしたのが原因です』

彼が続ける。

そんなはず……。

私は吹き出した笑いを止め、彼をまじまじと見つめ首を横に振った。

『じゃあ、こうしましょう』

『……?』

『次、雪の降る日にケーキを買いに行きます。

その時に、ちょっとだけ僕のお願いをきいてもらえますか?』

今度は、初めて面白い遊びを見つけた子供みたいに言う。

私はチラッと外を見た。

さっきまでチラチラと降っていた雪はもう止み、地面に落ちた白も溶けて色を無くしていた。

次、いつ降るだろうか……。

『──きっと、またすぐ降りますよ』

私の心を読み取ったのか、彼が私にそう伝えた。

これじゃあ、私が会える日を待っているみたい……。

『じゃあ、また』


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