ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
病弱で、入院していることが多かった母。
大学の教授で、考古学の博士でもある父。
父の衛(まもる)は珍しい遺跡を発掘しそれに対する論文が認められ、比較的若くして教授になった。
そのため、発掘や講演などで多忙になり家に居ることが少なかったのだ。
必然的に、茜と敬悟が二人で過ごすことが多かった。
もちろん、ベビーシッターなり家政婦なりの世話をしてくれる大人はいたが、もしこれが彼がいなくて一人きりだったら、さぞ寂しい子供時代を過ごすことになっただろう。
そんなことは良く分かっている。
「ったく、敬にぃは、ひとこと多いんだから!」
――おかげで、まともに『ありがとう』って言えなくなっちゃったじゃない。
敬悟に対して、今ひとつ素直になれない自分の感情を持てあましながら、茜は心の中でそう愚痴ると、父の元へと足を速めた。