ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
「疲れただろう。今日は、早めに休みなさい」
全てが終わり親戚の人間も帰って夜も八時を回った頃、自宅の居間で、父・衛が穏やかな声で言った。
いつもなら、理知的な中にも少年のような好奇心に満ちたメガネの奧の瞳も、さすがに疲れの色が隠せない。
「あ、うん……」
敬悟と二人、連係プレーで湯飲みや食器類を片付けていた茜は、自分の方がよほど疲れた顔をしている父にそう言われ、ただ、コクンと頷いた。
「敬悟も、休みなさい。食器の片付けは明日で構わないから」
「はい。そうします」
普段は、茜より遙かに片付けに意欲を燃やすタイプの敬悟も、素直に頷く。
敬悟は『風呂の用意をする』と浴室に向かい、茜は、重い足取りで二階の自室に戻った。
暗い部屋の中には、正面にベランダに面した掃き出しの窓。
右の壁際にベット。
そして、ベッドと向かい合うように机とチェストがおかれている。
いつもと何も変わらない風景。
でも、母はもういない。