ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】

この家で母・明日香が過ごした時間はそう多くはない。だが、数少ない思い出は確かに息づいていた。


この部屋で、語り合ったこともある。


でも、もう二度とそんな機会はなくなったのだ。


巡る茜の視線の先で、窓に掛かったオレンジ色のチェック柄のカーテンが、月明かりに照らされて部屋の中に格子模様を落としている。


茜は電気を付けず壁際のベットに、制服のままごろんと腹這いに倒れ込んだ。


――お父さん、一人で泣くのかな?


ふと、そんなことを思う。


「なんで、私は泣けないかな……」


自分は意外と冷たい人間だったのかもしれない。


絶対泣くだろうと確信していた収骨の時でさえ涙は出なかった。母の死を信じたくない、信じられない――というのとも違う気がする。


モヤモヤとした感情が心の奥底でくすぶっていて、気持ち悪いことこの上ない。


我知らずに、今日何度目かの長い溜息が漏れた。


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