ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】

母は大好きだった。


確かに、病弱で入院が多かったため、他の家庭のような親子関係ではなかったかもしれない。


でも、幼いころ病室で読み聞かせてくれた童話の本は、今でも本棚に大切にしまってあるし、年頃になってからは、学校のこと部活のこと友達のこと、何でも相談した。


どんな話しでも、母はいつも楽しそうに笑って聞いてくれた。


その母が死んだ。


死んでしまったのに、涙が出て来ない。


悲しいし寂しい。


なのに何故?


答えの出ない思いが心の中をぐるぐると巡る。


まるで出口のない迷路のようだ、と茜は思った。


トントン。


不意に響いてきたノックの音に、茜ははっとして起きあがった。



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