満ち足りない月
セシルの漏れた声に少女は聞こえないフリをしているのか、答えなかった。
代わりに冷たい目で言う。
「それで、食事部屋は?」
「あ、ええ。こっちよ」
それにしても何て偉そうな子なのかしら。
こんなに小さいのに年上への礼儀って物がないの?
……けれどさっきの質問といい、ラルを小僧と呼ぶ辺りといい、もしかしてこの子も人間ではない"何か"なのかしら。
だとしたらあの男の子も人間じゃないの?
疑問はたくさんあったが、セシルはともかく少女を食事部屋に案内することにした。
部屋に入ってからも朝食が来るまでは二人きり。
沈黙が続く中、二人は向かい合わせに座っていた。
そんな長い時間の中、ふいにセシルは思い出した。
そう言えばさっきラルはこの子をウルベって呼んでたわよね。
だったら昨日リュエフさんから言われた『ウルベ婆さんによろしく』ってこの子にって事よね?
「あ、あの!リュエフさんが"ウルベ婆さんによろしく"って…」
それにしてもなんでこんな子供に婆さんなんて…
やっぱり人違いなのかしら?