君に染まる(前編)
意識が飛びそうだったあたしは
その声で我に返るけど、
獅堂先輩はキスをやめようとしない。
ジャーーーーンッ!!!
後ろ手に鍵盤を思いっきり両手で弾くと、
一瞬緩んだ獅堂先輩の力。
その隙に先輩の腕の中から抜け出した。
「あ、未央、制服……どうしたの?」
袋に包まれた制服を手にする優先輩は、
部屋から飛び出したあたしに
目を見開いた。
「な、なんでもないです!」
「でも、今ピアノのすっごい音が…」
「制服ありがとうございました!
ジャージは洗って返します!!」
「え、ちょっと…」
なにか言いたげな優先輩から
制服を受け取り、
「お邪魔しました!!」
頭を下げてVIPルームから飛び出した。
…あたし、なんてことを!!
Ⅰ類の校舎に向かいながら
ほっぺたに手をあてた。
…熱い。
ほっぺだけじゃない…
体全体がゆでダコになってる…。
そのまま唇を触った。