君に染まる(前編)


意識が飛びそうだったあたしは
その声で我に返るけど、
獅堂先輩はキスをやめようとしない。



ジャーーーーンッ!!!



後ろ手に鍵盤を思いっきり両手で弾くと、
一瞬緩んだ獅堂先輩の力。



その隙に先輩の腕の中から抜け出した。



「あ、未央、制服……どうしたの?」



袋に包まれた制服を手にする優先輩は、
部屋から飛び出したあたしに
目を見開いた。



「な、なんでもないです!」



「でも、今ピアノのすっごい音が…」



「制服ありがとうございました!
ジャージは洗って返します!!」



「え、ちょっと…」



なにか言いたげな優先輩から
制服を受け取り、



「お邪魔しました!!」



頭を下げてVIPルームから飛び出した。



…あたし、なんてことを!!



Ⅰ類の校舎に向かいながら
ほっぺたに手をあてた。



…熱い。



ほっぺだけじゃない…
体全体がゆでダコになってる…。



そのまま唇を触った。


< 137 / 337 >

この作品をシェア

pagetop